2003年8月6日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 障害者などの郵便投票に「代理記載人制度」が設けられるそうですが、どういうものですか。(東京・一読者)
〈答え〉 現行の公職選挙法では、身体の障害などで本人が投票用紙に記載できない場合、投票所で投票管理者に申請し代理投票させる制度があります。また、重度障害などで投票所に行くことが困難な人には、本人がみずから投票用紙に記載することを条件に、郵便などによる不在者投票制度(郵便投票制度)が設けられています。
しかし、投票所にも行けず、上肢や視覚の障害などで自書もできない人は、代理投票も郵便投票もできず、事実上、選挙権を奪われています。このような立場におかれた筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者三人が国を訴えた裁判で、昨年十一月の東京地裁判決は“原告が選挙権を行使できる投票制度がなかったことは憲法一四条、一五条、四四条に違反する状態だった”と指摘しました。
日本共産党も以前からこの制度の改善を求めてきましたが、昨年の判決を一つのきっかけに郵便投票でも本人が選定した代理人(代理記載人)の代筆を認める「代理記載人制度」導入などを盛りこんだ、公職選挙法改正案が衆院全会派の共同提案としてまとまり、今年七月に成立しました。重要な前進といえます。来年夏の参院選までには実施される見込みです。あわせて要介護5の在宅高齢者も対象者となり、これらによって新たに二十五万人が郵便投票を利用できるとみられています。
郵便などの在宅投票制度は公選法の制定当初からあったものの、制度を悪用した不正事件が多発したことを背景に一時廃止された経緯があり、本人意思の確認などが運用上の課題となります。選挙管理機関が直接、在宅投票者まで出向く「巡回投票制度」は、海外での実施例もあり、本人意思確認も確実なことなどから強く要望されていましたが、今回も見送られました。引き続き制度をより充実させる運動が重要です。
(水)
〔2003・8・6(水)〕