2003年8月15日(金)「しんぶん赤旗」
衆院イラク特別委員会は七月三十一日−八月八日まで、イラク、アフガニスタンなどの実情調査のための超党派の調査団を派遣しました。日本共産党から参加した赤嶺政賢議員に、現地調査を踏まえ、イラクなどの復興のために日本は何をすべきなのか、聞きました。(聞き手・竹下岳記者)
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――自衛隊のイラク派兵を目的とするイラク特措法では、憲法が禁ずる「海外での武力行使」との一体化を避けるため、自衛隊の活動は「非戦闘地域」で行うことになっています。イラクの治安状況はどうだったのでしょうか。
赤嶺 バグダッド市内についていえば、私が六月に訪問したときよりも、治安は悪くなっているという印象を受けました。
以前は、報道関係者などが拠点にしているパレスチナホテルは自由に出入りできましたが、今回は四方を米軍の装甲車が警備し、日本の国会議員といえども、出入りするときは金属探知機によるボディーチェックを強要されました。
市内全域で米軍の戦車が走っており、与党議員も「異常な光景だ。イラク市民が反発するのも分かる気がする」と感想を漏らしていました。
また、われわれがバグダッドをはなれた直後、ヨルダン大使館で爆弾テロ事件が発生しました。六月に大使と懇談したとき、彼は「われわれは米国にイラク国民の気持ちを説明しているが、米軍はイラク国民の心を理解していない」と語っていました。
もともと、米英軍のイラク占領は国際法上も不法な占領です。その上、テロ勢力を摘発するために一般市民を拘束するなど、人権を侵害しています。このようなやり方を繰り返していれば、イラク国民の反発はますます強まり、治安は悪化するばかりです。
――政府は「イラク復興への貢献」という口実で、自衛隊のイラク派兵を強行しようとしています。日本はどのような支援協力が求められているのでしょうか。
赤嶺 政府は当初、「バグダッド国際空港周辺の人工池で浄水を行い、米軍に提供したらどうか」という与党の意向を受け、「米軍への水の補給」を、自衛隊の活動内容に挙げていました。
ところが、その人工の貯水池を見ると、米軍がすでに自前の設備を運んできて、浄水活動を行っていたのです。現場の兵士は「浄水活動の支援は不必要。もう満ち足りている」と明快に答えていました。
米英占領軍のサンチェス司令官は消防、ごみ収集、輸送、医療などを羅列しましたが、「この分野が弱いので、ここを自衛隊が担当してほしい」という明確な要請はありませんでした。
一方、バグダッド市内の小児病院を訪問すると、インフラ設備や実験用機具三十一点を列挙した「緊急に必要な機材・援助リスト」を私たちに手渡し、具体的な支援要請がありました。院長の説明によると、医者はいるものの、医薬品や機材が不足しているため十分な患者を受け入れられず、ベッドも三分の一しか埋まっていないということでした。
――アフガニスタンでの米軍の対テロ作戦を支援するために、テロ特措法にもとづく海上自衛隊の洋上給油が継続しています。現場はどうだったのでしょうか。
赤嶺 私たちは海自艦船が拠点にしている、アラブ首長国連邦のフジャイラ港を視察しました。
現場の自衛隊指揮官の説明によると、活動区域は主としてオマーン湾で、イラク戦争以前はペルシャ湾内に入ったこともあるとのことです。
海自が支援している海上阻止行動で、何人のテロ勢力が捕そくされたのか聞きましたが、「プレゼンス(展開)自体が、テロ勢力の逃走を防ぐための抑止になっている」と答えるだけで、具体的な数字は挙げませんでした。一方、「海上阻止行動は今後、十年ぐらいはつづくだろう」との見通しをのべていました。
その後、アフガンの首都カブールでカルザイ大統領と懇談しましたが、彼は「海上自衛隊が対テロ作戦支援を行っていたとは知らなかった」と驚いていました。
政府・与党はテロ特措法の二年延長をねらっていますが、明確な成果を示せず、アフガンの大統領にも認知されていないのが現状なのです。
アフガンには圧倒的な貧困が広がっています。中央政府の権限は弱く、地方で軍閥がはびこり、国づくりは困難に直面しています。
国づくりという点では、イラクでも憲法制定作業が進んでいますが、日本のあるNGO(非政府組織)関係者は「日本の憲法のようなものをつくってほしい。イラクの人たちは憲法九条のことをよく知っている」と語っていました。
憲法九条を持つ国として、自衛隊派兵よりも、日本がやるべき人道・復興支援はいくらでもある。そんな印象を強く持ちました。