2003年8月16日(土)「しんぶん赤旗」
【ワシントン14日遠藤誠二】国連安保理は十四日、イラクの復興をめぐる決議一五〇〇を賛成十四、棄権一で採択しました。
決議は、国連によるイラク支援派遣団(UNAMI)の創設を承認するとともに、米国が主導し七月に設立させたイラク統治評議会を、国際的に認められるイラク政府への「重要な一歩」と「歓迎」し、事実上これを支持するものとなっています。
決議案は、十三日に米国が提案していました。米国と対イラク戦争をともに進めた英、スペイン両国やブルガリア、アフリカ諸国などが共同提案国となっています。UNAMIの創設とその派遣期間を十二カ月とすることをうたうとともに、米英軍による暫定行政当局(CPA)が発足させたイラク統治評議会について「歓迎する」としています。
CPAが七月十三日に立ち上げたイラク統治評議会は、イラク国内の宗教、地域、政治各勢力から構成されるといいますが、同評議会の最終的な決定権はCPAのブレマー責任者が握っており、アラブ諸国などから「米国のかいらい」との批判が絶えません。安保理事国であるシリアは十四日、統治評議会を事実上支持する決議案の内容に難色を示し、棄権にまわりました。
国連イラク支援派遣団(UNAMI)は、アナン事務総長が七月の安保理公式会合で提案していたもので、今回の決議は現在イラクを占領している米英軍を支援するための各国軍隊派遣に“お墨付き”を与えたものではありません。
UNAMI創設については、人道支援を中心にイラク復興をめぐる国連の役割を拡大させるものとして、フランスなど一部常任理事国がその設立を評価しています。しかし同時に、UNAMIは米英軍の占領体制下で同軍の指揮下にある暫定行政当局(CPA)を補助するものとして位置付けられており、国連の役割拡大どころか、占領者である米英の補完的な機関としてレッテルを張られるおそれもあります。ニューヨーク・タイムズ紙十四日付は、ブッシュ米政権としては、イラク復興における国連の役割拡大をあくまで否定する考えをもっており、今回の決議はその立場に基づくものだと報じました。
米英軍が発足させたイラク統治評議会をめぐっては、決議は「歓迎」をうたっていますが、アラブ諸国唯一の安保理事国シリアが棄権にまわったように、アラブ域内では拒否反応が依然として強く残っています。安保理が同評議会の「国際的な認知」を強引に進めたという印象がぬぐえません。シリアはフランスとともに、イラク国民による真の統治へ期限を設定するよう働きかけましたが、これも却下されました。
国連では、UNAMI創設を認めることと引き換えに、ブッシュ政権が同評議会の認知を決議案に盛り込んだというのが通説になっています。決議案の正式な提案から一日たらずで採択されたことについても、「論議不足」との声がきかれます。(ワシントンで遠藤誠二)