日本共産党

2003年8月17日(日)「しんぶん赤旗」

英ケリー博士自殺 独立司法委員会審議

政権追いつめた事実


 英国防省の兵器問題専門家で元国連査察官を務めたケリー博士の自殺問題を調査する独立司法委員会(ハットン委員長)は、十四日までの三日間にわたって公聴会を開き、BBC記者や国防省高官らを証人として呼びました。これまでの審議で明らかになったことは−。

 (ロンドンで西尾正哉)


「脅威」のうそ

 ブレア英政権はイラクの大量破壊兵器の脅威を誇張し、国民を欺いて戦争に導いたと批判を受けています。政府による「誇張」を暴いた英BBC放送の報道の取材源になったと英国防省から名指しされていたのが自殺したケリー博士でした。

 公聴会では、ケリー氏が英国でも第一級の生物化学兵器の専門家で、イラク現地で国連査察官として活動していたことが確認されました。

 イラク戦争前には米中央情報局(CIA)や英軍情報部(MI6)にも助言してきたといいます。元国連査察官だったテレンス・テーラー氏は十一日の証言で、「国際的に認められていた。英国だけでなく米国や他の国でも高い評価を得ていた」と、ケリー氏の業績を評価しました。

 政府が情報文書を粉飾し、より“魅力的なもの”にしたと報じたBBCのギリガン記者は、「ケリー氏は『イラクの大量破壊兵器計画はちっぽけで、すべて実行しても大量に人を殺せるものではない』との認識を示した」と証言。同じくBBCのワッツ記者も、ケリー氏が「大量破壊兵器開発計画は極めて限定的なもので、その証拠があったとしても始まったばかりのものだと考えていた」と証言しました。

 イラクの現状に精通し、国際的にも認められた専門家だったケリー氏が、イラクの大量破壊兵器による脅威を「ちっぽけなもの」と指摘していたことは重大な証言となりました。

 ワッツ記者が提出したケリー氏との電話録音テープで、ケリー氏はストロー英外相やブッシュ米大統領のイラクの大量破壊兵器に関するコメントを「スピン(誇張による世論操作)だ」と指摘していました。

だれが誇張を

 国防省のハワード情報部次長の証言では、“イラクは大量破壊兵器を四十五分で配備可能”と盛り込まれた情報文書について、ケリー氏だけでなく国防省の二人の高官も懸念を表明していたことも明らかになりました。

 ギリガン記者によるとケリー氏はこの“四十五分”について「(情報文書が)公表される一週間前に、より魅力的にするために変更された」と指摘していました。さらに、その理由についてケリー氏は「キャンベル(戦略・報道局長)」とだけ答えたといいます。

 ケリー氏と三度インタビューしたワッツ記者によると、ケリー氏は“四十五分”を盛り込んだのはキャンベル氏ではないと否定しながらも、「私が言えることは、(盛り込んだのは)ダウニング街十番地(首相官邸)の報道官だということだ。キャンベル氏は報道室と同義語だ。彼はそれの責任者だからだ」と語り、“四十五分の主張”を盛り込んだのは、首相官邸筋だと示唆していたことも明らかになりました。

圧力の事実も

 証言からは、ケリー氏が七月四日、国防省の会合で承認なしに報道機関と接触すればけん責処分にすると告げられたことも判明。また、ケリー氏が下院外交委員会の調査へのケリー氏の出席に国防省高官のテビット氏が反対したのに対し、フーン国防相は出席を決めたことも明らかになりました。ブレア首相自身がケリー氏の処遇に介入したことも首相官邸からのメモで明らかになりました。

 独立司法委員会は十九日にブレア首相の側近で官邸のマスコミ対策を仕切るキャンベル報道担当補佐官の証人喚問を行うと発表しました。


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