2003年8月18日(月)「しんぶん赤旗」
アメリカが推進する新しい戦争方式「有志連合」に、政府は血道を上げています。イラクへの自衛隊派兵もその一つです。アメリカの巨大な軍事力への信奉と、協力しなければアメリカに見放される不安が「有志連合」に駆り立てています。
ブッシュ政権がとなえる「有志連合」(コアリション・オブ・ザ・ウィリング)が政府・自民党を席巻しています。
七月十日、自民党の国防関係合同会議。米フロリダ州タンパの米中央軍司令部に昨年から派遣されていた海上自衛隊幹部が帰国報告しました。
「コアリションは、今後の安全保障問題を解決する手段のトレンドとなる」
「コアリションでは自主的な貢献が求められるため、できることを迅速に打ち出すことが肝要だ」
中央軍司令部は中東地域を直轄し、アフガンでの対テロ報復戦争、イラク戦争を指揮しました。アメリカを支持し、「連合」に参加する各国の軍人が参集しています。そこで得た結論が、「コアリション」こそアメリカの安全保障戦略を推進する新しい形態で、それが今後の「潮の流れ」だというものです。
参加した議員たちから、イラク「復興支援」での米中央軍との連携や、自衛隊をいつでもどこへでも派兵して米軍と作戦行動できるようにする恒久法の制定が必要だ、などの声があがりました。
「有志連合」は、ブッシュ大統領がイラク戦争を遂行するために、アメリカを支持・協力する国で結成しました。これまでの同盟関係が基準ではありません。国連や国際世論が反対する国際法違反の先制攻撃戦争で、アメリカとともにリスクと犠牲をともにする国、アメリカに忠誠を誓う国々で構成しています。
「米国にとって『コアリション』による支援は、『一国主義』との批判を避けるために有用であるのみならず、『戦闘』後の『復興・再建』の段階での助力を得る上で必要不可欠となっている」
海自幹部の説明です。
イラクへの自衛隊派兵を主張する国防議員の一人はこういいます。
「同盟関係があるからといって、特別扱いはしてくれない」
「同盟」は「条約に基づき義務を伴う」のにたいし、「特定の任務・目的のために、条約に制約されない自主的な参加」が「コアリション」です。
いわば従来の「同盟」義務に加え、自主的積極的に「有志連合」で協力するのが新しい「日米同盟」というわけです。
海上自衛隊がインド洋で米艦船に給油するのも、陸上自衛隊をイラクに派兵するのも、これまでの同盟義務を超えるものです。
それにしても「有志連合」=対米協力に日本はなぜ熱を入れるのか−−。
防衛庁関係者はこういいます。
「アメリカは同盟国を常にチェックしていて、逆らうとどこかで仕返しをする。イラク戦争はハイテク兵器の戦争だったし、いざという場合、アメリカは自分だけでもやるだけの意思と力を示した。政府関係者の間に、日米同盟の地位が低下するという懸念が広く存在している」
アメリカの軍事技術の発達、軍事戦略の変化などで、アメリカは同盟国をそれほどあてにしないですむ、だから緊密に協力しないと、「日本の軍事的役割が低下し、アメリカに見放される」という不安です。
「国連が機能するには多くの問題がある」「国際関係は米国を中心として新たなものになりつつあり……イラクに対する軍事作戦を通じて、この動きは加速されている」(二〇〇三年版防衛白書)。イラク戦争を見て、政府・自民党内には、国連中心の世界秩序にかわって、アメリカの巨大な軍事力が「世界秩序」をつくりだすという認識が広がっています。
小泉首相はイラク特措法案審議の最終場面で、こういいました。
「アメリカは世界最強の国家だ。そのアメリカとどう協調していくかが、もっとも重要な課題だ」
強いアメリカに付き従うことが「国益」だとの考えです。
しかし、いま、アメリカの戦争の大義が根底から問われ、崩れていっています。力ではなく、正義と国際世論が世界秩序を形成する−これが世界の「潮の流れ」です。