日本共産党

2003年8月19日(火)「しんぶん赤旗」

政府が“徴収大作戦”

国民年金保険料 増える未納付

「高すぎて」国民悲鳴


 国民年金の保険料の納付率が過去最低の62・8%に落ち込むなか、厚生労働省は「国民年金特別対策本部」(本部長=坂口力厚労相)を設置し、保険料の徴収強化に乗り出しました。預貯金を差し押さえる「強制徴収」なども行う方針ですが、打開策となるのでしょうか。

制度に不信

 「保険料を“払わない”と言われるが、そうじゃない。払おうと思っても、高すぎて経済的に払えないんです」。東京都に住む母子家庭の母親(35)は、こう訴えます。月収は約十四万円。五歳の息子を育てながらパートをかけもちし、必死で生活を支えています。

 国民年金は、自営業者や二十歳以上の学生、無職の人などが加入しています。加入者は二千二百三十七万人(二〇〇二年度末)。保険料は収入に関係なく一律で、月額一万三千三百円の定額となっています。

 〇二年度の保険料の未納者は37・2%にのぼりました。保険料を全額免除する対象者の基準を厳しくしたことや、長引く不況やリストラなどによる収入減で高い保険料が払えない人が増えたことが主な要因です。

 社会保険庁がおこなった実態調査では、保険料を払わない理由として「保険料が高く経済的に支払うのが困難」が64・5%を占めています。(グラフ)

 未納率は若い世代ほど高く、二十歳代では五割を上回りました。経済的な理由に加えて、「高い保険料を払っても、老後の年金はどうなるかわからない。これでは、少ないバイト代から無理をしてまで払おうとは思えない」(二十五歳のフリーター)など、改悪が相次ぐ年金制度への不信感もあります。

 こうしたなか厚労省は、国民年金保険料の納付率を今後五年間で80%まで改善するという目標をかかげ、対策の検討を始めました。しかしその中身は、“いかに未納者から保険料を取りたてるか”というものです。

 たとえば、「納付しやすい環境づくり」として、コンビニエンスストアなどでも保険料を払えるようにします。免除制度の見直しも検討します。さらに、「十分な所得や資産」がある滞納者には、預貯金の差し押さえなど強制徴収を実施する方針を打ち出しました。

真の改革は

 未納率悪化の理由について、坂口厚労相は「年金そのものに対する信頼性が揺らぎ始めている」として、特に若い世代の不安に「お答えのできるような制度をつくらないといけない」(七月二十五日)とのべています。しかし、実際にやっているのは、物価が下がったからとお年寄りの受け取る年金額を削減したり、年金を受け取る年齢を遅らせることです。これからやろうとしていることも、「保険料は値上げ、給付額はいっそう減らす」という国民犠牲の年金「改革」で、将来不安と制度への不信感を高める改悪ばかりです。

 一方で、基礎年金への国庫負担を二分の一に引き上げる(現行は三分の一)という国民にたいする公約は先送りしようとしています。

 未納率の高まりの背景にあるのは、小泉「改革」による不況や失業者の増加、高い保険料や給付削減など年金制度の根幹にかかわる問題です。「保険料の納付は国民の義務だ」と責め立てるだけで解決するのは困難。雇用の拡大や暮らしを温める景気対策をすすめ、負担増・給付減だけの「年金改革」を抜本的に改めることが重要です。


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