2003年8月21日(木)「しんぶん赤旗」
【カイロ20日小泉大介】イラクの首都バグダッド中心部の国連現地本部で十九日起きた自動車爆弾テロで国連のイラク復興の責任者、セルジオ・デメロ国連事務総長特別代表(55)の死亡が確認されました。現地の国連当局者によると、死者は二十四人に達しています。国連発表では負傷者は百八人に上り、がれきの下にはまだ死傷者が取り残されている可能性もあります。現場では米軍当局などによる現場検証が始まりましたが、犯行グループによる声明はでていません。
爆発はセメント用ミキサー車を使った自爆テロとみられ、国連現地本部となっているカナル・ホテルの一部の屋根と壁が崩れ落ちました。爆発はデメロ特別代表の執務室のごく近くで発生したとの情報もあり、デメロ氏を狙った爆弾テロの可能性もあります。イラクの国連本部が直接、テロの被害にあったのは初めて。
国際的にもアラブ連盟をはじめ、米、英、仏、独、ロシア、中国、ブラジル、メキシコなどから厳しい非難が起きています。また、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラによると、イラク国内でも対米武力攻撃を宣言しているイラクの武装勢力「イラク・イスラム愛国抵抗運動」もテロ非難声明を発表しました。
イラクでは米英軍への襲撃に加え、七日にはヨルダン大使館を狙った爆弾テロが発生し、石油パイプラインなど経済施設や水道など生活インフラまで攻撃の対象となっていました。今回、テロの対象が国連機関にまでおよんだことは、イラク市民や援助関係者に衝撃を与えています。
今回の爆弾テロで、国連などによるイラクの復興、人道支援活動に極めて重大な支障が出るのは必至となっています。
国連現地本部となっている同ホテルには、特別代表執務室のほか、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界保健機関(WHO)など多くの国連機関が拠点を置いており、約三百人のスタッフが勤務していました。六月中旬に緒方靖夫参院議員を団長とする日本共産党調査団が現地を訪れた際にも、同ホテルで世界食糧計画(WFP)代表から聞き取り調査をおこないました。
爆発時には、地雷除去関係者の記者会見の最中で、多くの報道陣がつめかけていました。
福田康夫官房長官は二十日、バグダッドの国連事務所を標的とした爆弾テロ事件を強く非難するとともに、イラクへの自衛隊派遣について「現地の状況を見極めて、時期を決定する。年内か来年か申し上げる状況ではない」と述べ、年明け以降となる可能性を示唆しました。首相官邸で記者団に語りました。
福田長官は自衛隊派遣について「早い方がいいに越したことはない」としながらも、自衛隊に先立つ政府調査団派遣についても「慎重に状況を見極めて決定する」と述べ、具体的に検討できる状況にないとの認識を示しました。
これに関連し、政府筋は同日夕、「もともと年内と決めていたわけではないが、(事件によって派遣時期に)影響がないとは言えない」と述べました。