2003年8月21日(木)「しんぶん赤旗」
イラク国連現地本部爆破事件の犯人、目的などは不明のままです。イラクで国連関係者が襲われたのは今回が初めてではありません。しかし、今回のテロは、国連機関そのものの破壊と国連特別代表を含む国連関係者の殺りくを目的にしたものであることは明らかです。
米英軍のイラク戦争以来、イラク国内での占領軍にたいする攻撃は激化の一方ですが、そのなかで七日のヨルダン大使館前での爆破事件など、最近では第三国の外交団や国際機関をも巻き込むにいたっています。
最近の国連安保理決議一五〇〇などで、国連が米英占領軍を事実上支持する役回りを負わされているとする国連批判の声が、イラク内部でも高まっていたという分析もあります。しかし、国連にたいしていかなる批判があったとしても、本来イラクの復興支援活動の主体になるべき国連を攻撃目標にするのは、国際社会そのものに敵対することを意味します。
亡くなったデメロ特別代表は、米英軍の占領が続くのを批判し、国連こそがイラク復興の主役を果たすべきだと主張していたことも、テロ実行者は知るべきです。この許されないテロ行為に世界から非難の声が出ています。
しかも、これら機関への攻撃は当然イラクの一般市民やメディア関係者なども巻き込む結果となるのは明白です。こうした行為はイラク国民の利益にならないことも明らかにすべきでしょう。
今回の事件は、国連を無視しておこなった米英両国によるイラクにたいする侵略戦争、それに続く無法な軍事占領という事態のもとで生じました。まさに、米英軍がつくりだした無秩序と破壊の結果でもあります。
ブッシュ米大統領は五月一日に「主要戦闘の終了」を宣言しましたが、イラクの現実は「終了」どころか、戦争そのものが続いているといっていい状態にあることは、その後着任した現地駐留米軍司令官自身が認めたところです。
米英軍の横暴な行為が市民の反発と怨嗟(えんさ)の的となり、そのなかで米英兵士にたいする襲撃は激しさを加えてきています。そうしたなかで、国連施設などにたいしては、米英軍はまともな警備もしていませんでした。無秩序状態をつくり出した張本人はいま、その状態の克服の責任を果たそうともしていないのです。
「無法な戦争」が事実上今も続くイラク。一日も早く米英軍は占領をやめ、戦後復興の仕事を真に国連主導のもとにおくことが求められています。(三浦一夫外信部長)
【ワシントン19日遠藤誠二】バグダッドの国連現地本部が爆破されデメロ特別代表らが殺害された事件は、ニューヨークの国連本部に大きな衝撃を与えています。アナン事務総長は十九日、テロを非難する声明を発表し、欧州での夏休みを切り上げ二十日にはニューヨークの国連本部に戻る予定です。
ニューヨークの国連本部で勤務する職員らは十九日、犠牲者を追悼しました。本部建物前に掲げられている国連旗と加盟国の国旗はすべて半旗となりました。アナン事務総長は声明で、「イラクの独立、主権国家の確立、一日も早い復興のためイラク国民を支援するという一つの目的のためにおもむいた人たちを殺害した、いい逃れができない暴挙だ」「国連だけでなくイラク国家にたいする犯罪行為」とテロ事件を強く非難しました。
デメロ代表が犠牲になったことについてアナン事務総長は「国連と私個人にとっても痛烈な打撃となった」とのべています。
十九日、安保理は緊急会合を開催。会合後にシリアのメクダッド国連代理大使が声明を読みあげました。声明は「このようなテロ攻撃が、イラク国民を支援する国際社会のさらなる努力を壊すことはない」と強調したうえで、「イラクにおける国連の役割とその意思が、テロ攻撃で影響を受けることにはならない。平和の修復と安定した国家にむけイラク国民を継続して支援することで団結することを安保理は再確認した」とうたっています。