2003年8月21日(木)「しんぶん赤旗」
イラクでの武力攻撃の最近の特徴の一つは、駐留米軍部隊に対する襲撃が頻発し、死傷者が毎日のように出ている一方で、「ソフト・ターゲット」(より狙いやすい標的)への攻撃が強まっていることです。
その対象となっているのが、親米とみられる外国大使館、米国防総省や米国際開発局と契約して「復興事業」を請け負った企業のスタッフ、そして国連の調整下で活動する非政府組織(NGO)の援助団体です。現在のイラク占領下で国連は復興の中心的役割を担わされていないため、国連関連組織でさえ、米占領軍を憎む勢力にとっては「付随機関」と映り、標的と位置付けているようです。
ロイター通信によると、難民支援団体「レヒュジーズ・インターナショナル」のケネス・ベーコン氏(クリントン政権時の米国防総省報道官)は、援助グループの安全がますます脅かされ、「ソフト・ターゲットになっているとの感じを強めている。以前は軍部隊に攻撃が集中していたようだが、七月から八月にかけてNGOと国連スタッフへの攻撃が増えている」と語っていました。
百六十五の支援グループを結集する「インターアクション」のスポークスマン、バルマン氏も「人道援助活動家への攻撃の頻度に極めて憂慮している」と述べています。
五日には「石油復興事業」を受注したチェイニー副大統領と因縁の深いケロッグ・ブラウン・アンド・ルート社の米国人社員の車が爆発物を踏み、米民間人として初の死者が出ました。受注企業各社は予算オーバーを覚悟で警備会社と契約を結び、二十四時間態勢の警備に戦々恐々の状況になっています。
ソフト・ターゲットへの攻撃として注目されたのが、七日に発生したヨルダン大使館付近での自動車爆弾爆発、十一日に英国大使館に向けて手投げ弾が放たれた事件で、民間人が巻き込まれました。米軍は大使館の警備を、占領当局が組織したイラク人警官にまかせていました。
米軍当局は、こうした攻撃は「フセイン政権残党」や民兵組織「フェダイーン」とともに、外部勢力が入って、調整なしにそれぞれ個々に実行しているとみています。テロ組織「アルカイダ」の存在ははっきりしないとしながらも、同様に「米国との聖戦」を唱える勢力がシリア、サウジアラビア、イエメンから入っていると述べています。
警備が手薄で、攻撃に対して「ぜい弱な」施設・団体・民間人の安全確保の措置が改めて問われています。
しかし米軍当局はイラク人警官に代わって大使館警備などにあたることはないとしてきました。抵抗勢力一掃の軍事作戦に集中し、その士気をくじこうとフセイン元大統領の捕獲または殺害を最優先しています。(居波保夫記者)