2003年8月22日(金)「しんぶん赤旗」
バグダッドの国連事務所を標的にした爆弾テロ事件が、イラクへの自衛隊部隊派兵で米国への忠誠ぶりを示そうとした日本政府に大きな衝撃を与えています。このことは、無法なイラク戦争とその後の軍事占領を無条件で支持・容認し、米国の言いなりに自衛隊を派兵するためのイラク特措法をごり押しした政府の道理のなさを示しています。
日本政府はイラク情勢について、「フセイン政権残党による散発的・局地的抵抗があるが、戦闘は基本的に終了している」(小泉純一郎首相)という認識のうえで、戦後初めて戦地に自衛隊の地上部隊を送りこむイラク特措法を持ち出しました。憲法上の“制約”をすり抜けるために、自衛隊が活動するのは「非戦闘地域」だから問題ないなどと言って、強行したのです。
しかしイラクの状況は、米軍の現地司令官でさえ、「全土がいまだ戦闘地域」というほど。まさに泥沼化しています。ブッシュ米大統領が「戦闘終了」を宣言した五月一日以降も、米英軍の死者は増え、第三国の兵士にも犠牲者が生まれていました。そのうえ今度は国連への攻撃です。
もはや、特措法審議で政府が言いつくろってきたことが、まったくの虚構であったことは明白です。
そもそも、独自の判断もできず、米国の派兵要求につき従ったことが誤りです。
深刻な事態に直面して日本政府は、自衛隊の年内派遣を延期する方向で検討していると伝えられています。“初めに自衛隊派兵ありき”の対米追随姿勢で、いかにずさんな議論をしてきたかを告白するようなものです。
しかしこの期に及んでまだ、自衛隊派兵を推し進める方針を変えていないということは重大です。派兵を先送りしたからといって、イラクをめぐる問題が解決するわけではありません。
テロ行為はどのような口実であれ許されません。まして、本来イラク復興の中心となるべき国連に対する攻撃は、国際社会に対する敵対行為であり、イラク国民への背信行為です。
同時に重大なことは、今回の事件が無法な戦争とそれに続く占領という事態のもとで起きたということです。米英軍に対するイラク国民の不安と不満、そして反発を生んでいることは明らかです。
日本政府は、国連憲章に違反する米英軍による対イラク戦争をいち早く支持し、占領支配も容認してそのための自衛隊派兵を急いできました。
イラク国民の気分も感情も踏まえず、ただ米国の求めに応じて自衛隊を送ることしか考えてこなかったのが日本政府のこの間の対応です。
いま日本政府に求められるのは、米英軍による占領をこれ以上容認することはやめ、真にイラク国民の立場を踏まえ、国連を中心とした復興のため真摯(しんし)な努力を尽くすことです。自衛隊派兵など論外です。(山崎伸治記者)