2003年8月25日(月)「しんぶん赤旗」
サラリーマンの社会保険料の総報酬制が小泉内閣と自民、公明などの与党によって導入され、この春から実施されました。ボーナスの保険料負担の大幅増で、手取りが減り、夏の計画にもひびいた人も多いはず。十数人の中小企業の給与計算を担当するという本紙読者のTさん(社会保険労務士)から「保険料は労使折半。厳しい経済状況のなか、中小の事業主にとっても、労働者にとっても大変な負担。事業主と労働者が力を合わせて頑張っているのに水をさすやり方には納得いきません」という手紙が届きました。
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Tさんが社会保険労務士として担当している会社は半導体関連の会社。ボーナスが出せないという業者が多いなかで、独自の分野で経営を広げ、利益を従業員に還元しようと努力してきたといいます。
従業員十人(パート労働者や中途入社を除く)の保険料についてTさんは、三月までの保険料が、四月からの保険料率の改定でどうなったかを計算しました。平均的な月収と、今年の夏のボーナス、冬のボーナスは昨年の実績に基づいています。「あまりのひどさに改めて総報酬制度の矛盾を感じました」といいます。
表のように五十代のAさんは年間で十四万円保険料がアップ、二十代のBさんも十万円アップしました。十人分を集計したところ、約六百八万円から六百九十四万円に。今夏のボーナスにかかる保険料は、十人分六万五千円が、八十九万八千円へとあがりました。
Tさんは、この結果について労働者の手取りが減るということにとどまらないといいます。
「労使折半ですから、事業主も同様の負担をすることになります。年間一億円近い利益をあげている会社ですが、いつ不渡りをだすか、社長は、社員に還元したいと思っているのに、福祉っていったいなんなんだと、怒りだすし、社員もいったいどういうことだと驚いていました」
厚生労働省は、厚生年金は将来の給付に反映させるといいます。
しかし、五十代のAさんを例に計算したところ、今回の厚生年金保険料値上げ分は五万二千円。これによる年金増額は年間五千円程度です。「個人消費の低迷が経済不況の原因といわれるなかで、こんな保険料増収はおかしい」
東京中小企業家同友会の荻原邦弘事務局次長の話 景気の悪化で経営が厳しいなか、ボーナスが出せない経営者も多い。また、借金をしてもボーナスを支払う経営者もいる。中小企業にとって従業員の働く意欲が経営に大きく影響するからです。そのなかで社会保険料の負担は大きく、払えなくなったり、労働者の理解を得て経営を守るために国民健康保険・国民年金に変更するところも少なくない。安易な保険料負担増は、保険制度を崩壊させる。安心して働きつづけられるための社会保障制度をつくっていかなければ。
厚生年金保険料率 月給17・35%・ボーナス1%→改定後両方とも13・58%(労使折半)
健康保険の保険料率(政管健保の場合) 月給8・5%・ボーナス1%、平均的な人の負担が変わらない年間比率7・5%→8・2%(労使折半)40歳未満で介護保険料を含まない場合