2003年8月25日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン23日遠藤誠二】イラクの首都バグダッドの国連現地本部爆破テロなど深刻化するイラク情勢をめぐり、国連安保理は協議を続けています。ブッシュ米政権は、米英占領軍の支配権を手放すことなく、ドイツやフランス、インド、トルコなど広範な諸国の軍事支援をとりつけようとしています。しかし、イラク復興の事業そのものを国連の主導権のもとに置き、治安維持についても国連の承認のもとでの多国籍軍にゆだねるべきだとする声が国際的にも米国内でも強まっています。
イラク国内で米兵への襲撃がやまず、米国の世論は米軍のイラク撤退に傾きつつあります。ブッシュ政権は、国連現地本部テロ事件後、米軍の負担を減らすために、国連安保理に、多くの国に部隊派遣をよびかける新たな決議を提案する動きに出ました。二十一日付のワシントン・ポストは、米国務省の担当者は、テロ直後から「新決議の草案づくりを始めた」と伝えています。
パウエル国務長官は、「新決議で何らかの言葉」が必要になるとして、各国によるイラクへの部隊派遣にむけ何らかの譲歩をする構えをみせていますが、米英占領軍の指揮権を国連に移すことは拒絶しています。
二十三日のラジオ演説でブッシュ大統領は、国連施設やイスラエルのバスを標的にした最近のテロ攻撃についてのべ、「対テロ戦争はひるむことはない」「世界は脅されはしない」などとのべました。その上で、同大統領は、世界は米国の主導のもと対テロ戦争に引き続きまい進すべきだ語りました。増加する米兵の犠牲、見つからない大量破壊兵器など、内外の批判が強まるなか、問題点を対テロに移すブッシュ政権の焦点そらしの戦術が透けて見えます。
こうしたブッシュ政権の姿勢には、あちこちで反発が出ています。治安や経済問題での権限を米英の暫定行政当局(CPA)にとられ、主として人道援助分野などに活動を制限されてきた国連のアナン事務総長は、「政治、経済、復興と治安などの分野」(二十二日の記者会見)で国連への権限移譲をはかる必要性を強調。「国連の承認をうけた多国籍軍」の創設まで主張しました。
米週刊誌『ニューズウィーク』が二十三日に発表した最新の世論調査によると、70%の回答者が「米国はイラクで泥沼に陥る」と回答、48%が、米軍は「イラクから撤退すべきだ」と答え、「残るべきだ」の47%を上回りました。また72%が、いくつかの分野で「権限を国連に移譲すべきだ」と答えており、米国民の世論もブッシュ政権の思惑の逆をいき始めています。