2003年9月2日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントンで遠藤誠二】十一日の米同時多発テロ二周年を前に、米国内の平和・反戦運動が再び盛り上がる気配をみせています。テロ犠牲者遺族らでつくる平和組織「平和な明日をめざす9・11家族の会(ピースフル・トゥモローズ)」は十日にニューヨークで集会を開催する予定。テロ直後からイラク戦争まで活動を続けてきた反戦連合体の一つ、「国際ANSWER(戦争阻止と人種差別停止を今こそ)」は十月二十五日にホワイトハウス前で全国規模の大集会を計画しています。
ピースフル・トゥモローズは、十日夜から十一日未明にかけ、ニューヨーク・マンハッタン地区で祈りの式とコンサートを開催。「希望の輪」と名づけた行事では、参加者が世界貿易センタービル跡を囲む「人間の鎖(輪)」をつくる計画です。同組織は、全米各地でも「希望の輪」に呼応した祈りの式の開催を呼びかけています。
ベトナム侵略戦争以来の盛り上がりといわれたイラク侵略前の反戦運動は、米英軍による侵略作戦が実際に始まると一時しぼんだかに見えました。しかし現在、息を吹き返しています。
ブッシュ政権が対イラク戦争遂行の最大の根拠にしていた大量破壊兵器は全く見つからず、米兵の死者が増え続ける現状に、米国民の七割が戦争の「泥沼化」を予測(『ニューズウィーク』誌八月二十三日号)。イラクへ従軍している米兵の家族らでつくる反戦団体「声をあげる軍人家族たち」(MFSO)が唱えていた「われわれの部隊を今すぐ故国に戻せ」は現在、反戦・平和組織全体の合言葉になっています。
国際ANSWERは、「ブッシュのベトナム戦争」との言葉を使い、大統領再選を目指すブッシュ大統領を追い詰める行動を強める構えです。
米国の平和・反戦運動をめぐる環境は、平和活動家が「非国民」よばわりされた二年前の同時多発テロ直後とは様変わりしています。八月二十三日には、テキサス州クロフォードにあるブッシュ大統領所有の牧場近くで反戦集会が開かれ、イラクに従軍している米兵の家族らが、夏休みをとっている大統領の耳元近くで、「父、夫を早く返せ」と訴えました。
米国で最も保守的な州の一つといわれるテキサス州の大統領別荘近隣でのデモは、テロ事件以来、高い支持率を保ってきたブッシュ大統領が落ち目にあることを象徴する光景です。
同日ワシントンでは公民権運動指導者、故キング牧師の歴史的演説の四十周年を記念する行事が開かれました。アフリカ系住民の平和組織「ブラックボイス・フォー・ピース」のダム・スミス代表は「平和、人権、法と正義、人権問題などをめぐり、この国は今、最も危険な状態にあるといってよい。国民はこのことをもっと深刻にとらえるべきだ」と指摘。すでにキャンペーンが始まっている来年の大統領選でのブッシュ再選阻止を訴えました。