2003年9月4日(木)「しんぶん赤旗」
米英両国がイラクにおこなった先制攻撃の戦争には、日本に駐留する米軍(在日米軍)のうち約一万人が参加しました。「日本防衛」という日米安保条約の建前さえ無視したものです。日本共産党の綱領改定案で指摘しているように米国は日本を世界戦略の前線基地として、自由に使用し自国の戦争のための出撃拠点にしているのが実態です。
イラク戦争での民間人の死者数は最大で七千八百三十六人、最低でも六千百十八人―。
米英の研究者らによる調査プロジェクト「イラク・ボディー・カウント」が明らかにしている数字です。(三日現在)
イラク戦争に参加した在日米軍は、罪のない子どもや女性など多数の市民の命を奪った無法な戦争で、重大な役割を担いました。(3面に表)
横須賀(神奈川県)を母港にするミサイル巡洋艦カウペンスは、巡航ミサイル・トマホークによるイラクへの先制攻撃の第一撃に参加。厚木基地(同)に配備されている空母キティホークの艦載機は、一つの親爆弾から約二百の子爆弾が飛散し、広範囲にわたって人を殺傷する残虐兵器・クラスター爆弾を繰り返し使用しました。
イラク戦争をいち早く支持した小泉・自公保政権は、在日米軍のイラク戦争への参加を当然視し、問題にすらしませんでした。
なぜ、中東から遠く離れた日本から米軍部隊がイラク戦争に派遣されるのか。
最大の理由は、在日米軍の主力が、「空母戦闘群」「航空遠征軍」「海兵遠征軍」など、海外での介入・干渉戦争の遂行を専門にする“殴り込み”部隊だからです。
空母戦闘群(空母機動部隊)は、海外に遠征し、艦載機による空爆や巡航ミサイルでの攻撃などをおこなう部隊です。米海軍は海外では唯一、横須賀基地に空母キティホーク戦闘群を配備しています。
米空軍は、世界の紛争地などへの迅速展開を目的にした航空遠征軍を編成しています。三沢基地(青森県)のF16戦闘機部隊や嘉手納基地(沖縄県)のF15戦闘機部隊は、航空遠征軍として対イラク監視・空爆作戦に繰り返し派遣されてきました。
このほか、沖縄の巨大基地群と岩国基地(山口県)には、強襲上陸作戦を主な任務にする海兵隊(第三海兵遠征軍)が駐留。佐世保基地(長崎県)には、海兵隊と一体になって作戦を展開する強襲揚陸艦エセックスなど水陸両用即応群が配備されています。
海兵遠征軍や水陸両用即応群が置かれているのも、世界で日本だけです。
米海軍は、佐世保の水陸両用即応群と沖縄の海兵隊部隊(第三一海兵遠征隊)に、巡航ミサイル発射艦や攻撃型原子力潜水艦などを加え、あらゆる事態に即応できる「遠征攻撃群」を編成する計画も進めています。
在日米軍を配下に置く米太平洋軍のファーゴ司令官は、六月の米下院公聴会で「われわれは、太平洋地域や、必要とされるほかのどんなところにも即座に展開できる遠征能力の開発を懸命におこなっている」と証言しています。
イラク戦争に象徴されるブッシュ米政権の先制攻撃戦略のもと、在日米軍は海外“殴り込み”部隊としての能力をいっそう強化されようとしているのです。