2003年9月5日(金)「しんぶん赤旗」
【ベルリン3日片岡正明】イラクに多国籍軍の派遣を求める米国の方針が伝えられた三日、シュレーダー独首相は「戦後のイラクの安定化と復興の過程が成功するには国連が大きな役割を担わなければならない」と表明する一方、「独政府に軍派遣などの計画はない」と確認しました。
イラクでの治安問題、多国籍軍派遣についてドイツは、これまで米英中心のやり方を批判し、一貫して「国連の指導的役割」の重要性を強調しています。
フィッシャー独外相は、国連事務所などへのテロが相次ぐイラクの状況について、イラクでは「国連主導の治安と安定回復のための政治過程がまったく欠けている」と最近の新聞インタビューで米英の治安、統治を批判。米国からの出兵要請や資金援助の要請の話が出ていることについて、「ドイツはイラク戦争にたいし十分な理由から反対の態度をとった」と軍派遣や軍事援助を明確に否定しています。
また、北大西洋条約機構(NATO)軍のイラク派遣について「さらなる外国軍の存在を利用してイラクの過激主義者が国民を抵抗に駆り立てることも考えなければならない」と語っています。
シュレーダー首相やフィッシャー外相はイラクの平和回復には国民自身の手で治安と復興を進め、アラブ諸国など近隣諸国を巻き込むことが必要で、そのためにも国連が中心的役割を果たすべきだと強調しています。
【パリで浅田信幸】イラク復興問題でフランスは、米国主導の進め方に批判的な立場をとり、イラクの主権回復を急ぐこととその過程で国連が中心的役割を果たすことを主張しています。
シラク大統領は八月二十九日、イラクの混とん状態を前にして、治安対策だけでは「十分でない」として、「権限と主権をイラク人自身の手に移す」必要性を強調。それを「国連だけが全面的な正当性を与えうるプロセスの枠組み」の中で実行することを提唱しました。
ドビルパン外相も八月二十一日の国連安保理で、「占領を終結に導き、イラク人の主権回復を可能にする速やかな政治的移行」が「(米英中心の)占領軍ではなく、国連に体現された国際社会全体の援助を受け、イラク人自身によって推進されなければならない」と訴えました。
また同外相は、治安の安定化のための部隊については、米英を中心とする「現部隊の調整や拡大で満足するわけにはいかない」とのべ、「国連の委任のもとでの真の国際部隊」の必要性を強調。さらに仏軍の派遣問題では、戦争に反対したフランスが「(米英)連合軍に加わることは一貫性を欠く」とし、派遣がありうるとすれば「国連平和維持軍の枠組みにおいてだけ」との見解を明らかにしています。