2003年9月12日(金)「しんぶん赤旗」
【パリ10日浅田信幸】ドイツとフランスは十日、先に米国が国連安保理に提出したイラク新決議案に対し、国連を政治的、経済的復興の中心に位置づける共同修正案を関係国に提出しました。AFP通信が報じました。あくまで米国主導をくずさない米国案に対する抜本的な代案であり、十三日にジュネーブで行われる安保理常任理事国外相会議の行方に大きな影響を及ぼしそうです。
修正案は占領軍の暫定行政当局(CPA)のブレマー文民行政官が果たしている全責任をアナン国連事務総長に移し、国連安保理のコントロールのもとに置くとし、占領軍に対しては天然資源と国際援助の管理を含めイラクの行政をイラク人の手に速やかに移管することを求めています。
また国連事務総長は三カ月ごとに安保理に報告を提出。「イラク暫定内閣が全面的な代表性をもつイラク政府を樹立する行程表を作成し、憲法草案の作成と民主的選挙を準備するよう援助する」としています。
治安問題について修正案は、創設される多国籍軍の目的を、あらかじめ決められる「政治的行程表の実現を可能にする安全と安定をつくりだす」ことにあるとし、多国籍軍の指揮を米国がとることについては異議をはさんでいません。しかし、米国主導の有志連合軍と国連決議に基づいて派遣される多国籍軍が異なった任務をもって並存することに反対し、「統一指揮のもとでの単一の軍」を主張。米英占領軍を多国籍軍の一部に編入することを主張しています。
米国は今月はじめ、爆弾テロや占領軍にたいする襲撃で泥沼化の様相を強めるイラク情勢に直面して、国際社会に支援と負担を求めることを意図した決議案を提出。しかし行政、軍事に関する最終決定権は占領軍が握ったままで、独仏をはじめ少なくない国が保留の態度を表明していました。
米国務省報道官は十日、米国提出の決議案について「論議」は期待するが「文章変更の交渉は期待しない」と表明。一方独仏は「建設的立場」を強調しているものの、十三日の安保理常任理事国外相会議が論争の場となる可能性もあります。