2003年9月19日(金)「しんぶん赤旗」
二〇〇四年に予定されている「年金改革」にむけ、政府も、日本共産党が提案してきた年金積立金の取り崩しにふれざるをえなくなっています。
国民が支払う年金の保険料は、老後の年金給付に使われ、残りが積立金としてため込まれています。その額は、国民年金と厚生年金を合わせて約百四十七兆円(〇二年度末)にもなります。
年金給付など必要な支出総額の約五年分です。ドイツ一カ月分、イギリス二カ月分、アメリカ約一年五カ月分など、欧米諸国の積立金が数カ月から一年分程度なのと比べ、突出しています。
政府は、巨額の積立金について、「積立金が生み出す利子収入を活用することによって、保険料負担を軽減するため」だと説明し、取り崩しを拒否してきました。
しかし、実際には、国民の財産である積立金を株式市場などに投資してきた結果、利子収入を得るどころか、〇二年度末までに累積で六兆円を超える運用赤字を出し、年金財政に大穴をあけています。このため、年金積立金のあり方に国民の批判が高まってきました。
こうしたなかで、政府も方針を転換し、年金積立金の取り崩しを言わざるを得なくなりました。
六月に閣議決定された小泉内閣の「骨太の方針」第三弾では、今回の「年金改革」の具体的方針として、年金積立金を「将来に向けて、年金の支払に支障のない程度まで抑制する」と打ち出しました。
五日に坂口力厚生労働相が公表した試案では、年金積立金を約百年かけて、給付費の一年分程度まで徐々に取り崩すことを提示。日本経団連も「高齢化のピークに向けて可能な限り抑制し、給付費の一年分程度とすることによって、保険料の上昇を抑制すべき」だとしています(十日、今次年金制度改革についての意見)。
日本共産党はこれまで年金大改悪に反対し、世界に例のない年金積立金のため込み方式をあらため、巨額の積立金を計画的に取り崩し、給付の充実と保険料負担の軽減にあてるべきだと提案してきました。
基礎年金の支給開始年齢を段階的に六十五歳に遅らせるなどの一九九四年の年金改悪にたいしては、「(年金積立金を)計画的に活用するなら、六十五歳繰り延べも、保険料の大幅引き上げも回避することは可能」(九四年十月二十四日付「赤旗」主張)だと提案。二〇〇〇年に強行された年金改悪法の審議でも、「積立金を計画的に取り崩せば、年金の保険料の負担もこれほど高い方向を出さなくてもいいし、国民に安心した年金の方向も打ち出せる」(瀬古由起子議員、衆院厚生委員会、九九年十二月一日)と見直しを求めてきました。
二〇〇〇年六月の総選挙では、この問題を国政の焦点として国民によびかけました。
政府は、国民の年金不信をなくすことを今回の「改革」の理由にしていますが、給付減と保険料負担増を繰り返すやり方を改めないかぎり、国民に安心を示すことはできません。年金積立金の問題でも、取り崩しに百年もかけるのではなく、欧米の積立金を参考に、実効ある活用を示すことが不可欠です。(秋野幸子記者)