日本共産党

2003年9月20日(土)「しんぶん赤旗」

チュニジアの七日間(26)

中央委員会議長 不破哲三

ベンヤヒア外相との会談 (その4)


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PLOアラファト議長(右)と会談=1981年、東京で

“パレスチナ問題でも「正当性」をもったたたかいを”

 外相の話は、ついで、中東問題でもっとも複雑で重要な問題の一つ、無差別テロの問題に進んだ。たたかいの「正当性」という角度からの接近である。

 ベンヤヒア 平和を求めること、また正当性をもったたたかいでなければならないこと。われわれのこの問題(パレスチナ問題)についての立場は明確だ。一九九一年の第一次湾岸戦争の後、われわれはパレスチナとイスラエルの共存を強く主張し、オスロ合意をはじめ、いくつもの合意を達成する上で、かげながらさまざまな支援をおこなった。しかし、イスラエルのネタニヤフ首相(九六年六月就任)が妨害し、バラク首相(九九年七月就任)が元にもどそうとしたが、結局、シャロン首相(〇一年二月就任)によって破たんさせられた。四者合意〔米、ロ、国連、EU〕による和平へのロードマップが正確に正直に実施されて、二〇〇五年にパレスチナ国家が樹立されることを願っている。

 パレスチナであれ、イスラエルであれ、人命を無視してはならない。イスラエルは安全保障と平和はミサイルや大砲など軍事手段でしか達成されないという立場だ。しかし、安全保障は平和的手段によってこそ達成されるものだ。

 歴史が示すように、植民地からの独立を求める運動は、どのような迫害があっても発展し、独立を達成するまで続く。しかし、それは、正当性をもったたたかいでなければならない。チュニジア、アルジェリア、モロッコの独立運動もそうだった。独立のためには、公明正大な原則にのっとってたたかうことが必要であり、それが歴史の鉄則だ。

“「過激主義」の根源は貧困にある”

 外相は、いろいろな国際条件の変化をあげて、パレスチナ問題の解決は、きびしいが前途に「希望がある」ことを強調した。続いて、とりあげた「過激主義」の克服についての話は、深く考えさせるものがあった。

 べンヤヒア テロリズムあるいは「過激主義」とは何だろうか。テロリズムの根源には、人びとのフラストレーション(欲求不満)の蓄積がある。パレスチナ、アフリカ、その他の地域でも同様だ。そして、貧困こそ、フラストレーションの根源だ。

 テロや過激主義を、わが国でいかにして克服したか。大砲で克服したのではない。一九七〇年代から八〇年代、私たちは「原理主義」の生じる原因を真剣に考え、探究した。そして分かったのは、「原理主義」は宗教が原因で生まれるのではない、イスラムが原因ではない、ということだった。

 私たちは、集中的投資を通じての発展、貧しい農村への投資の倍加など、社会的な連帯を強めて、貧しい農村の表情を変えた。貧困層は現在、人口の4・2%にまで減少した。今日、チュニジアでは、80%が中産階級だ。首都から遠い地域では道路や学校をつくり、電気を通し、ラジオを聞きテレビを見られるようにしてきた。人びとが近代化を生きる、これがわが国の「改革」だ。われわれはこうして「過激主義」を克服してきたのです。

「過激主義」とのたたかいをめぐって

 外相は、「長い話を辛抱していただいた」と述べて話を終えた。

 不破 核心にふれた話で、時間の長さを感じなかった。正当性を欠いたたたかいは、その目標が道理のあるものであっても、運動の大義を傷つけることになる。

 ベンヤヒア ゼロになる。

 不破 その問題をめぐって、私たちが、ある時期、PLOとトラブルがあったことは、三年前にお目にかかった時にも、お話しした。一九七八年、イスラエルのテルアビブ郊外で一般市民や子どもたちの乗ったバスがテロ攻撃で襲われたことがあった(外相、うなずく)。私たちが機関紙の「赤旗」で“一般市民にたいする無差別テロはパレスチナ解放運動の大義を傷つける”という論説を発表したら、当時のPLO東京事務所から、敵対行為として非難を浴びせられた。この問題は、一九八一年、PLOのアラファト議長の来日のさいに解決した。アラファト議長が、私との会談のなかで、PLO東京事務所の側に道理がなかったことを、率直に認めたからだった。

 「正当性をもったたたかい」という問題に、その後ももっと力が注がれていれば、世界からもっと大きな支持を得て、運動がより有利に展開できたと思う。

 イスラム原理主義が宗教的な原因から生まれたものではないという話も、たいへん興味深く聞いた。

 ベンヤヒア 宗教ではないのです(と首を縦に振る)。

 不破 宗教的な教義の正当性は、いくら争っても片づかない。自分たちの成功談を宣伝するのは、チュニジアの流儀に合わないかもしれないが、あなた方が、この問題を社会・経済的な政策によって合理的に解決してきた経験は、世界にたいして大いに語る値打ちがある、と思う。

 ここで、携帯電話に大統領から電話があり、外相は「失礼」と席を立った。(つづく)


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