2003年9月20日(土)「しんぶん赤旗」
反テロを口実に米国が強行した対イラク戦争。米首脳は最近、相次いで対米同時テロへのイラク・フセイン大統領の関与を否定する発言をしています。大量破壊兵器が見つからない問題と合わせて、イラク戦争が虚偽に基づいて行われたことがいっそう明らかとなっています。
ブッシュ大統領は昨年十月の演説で、フセイン政権が米国を攻撃したテロ組織アルカイダと連絡をとり米国への敵意を共有し、アルカイダ幹部をイラク国内で治療させたと述べました。しかし、それ以上の証拠を示すことなくイラク戦争に突入しました。
今年八月の記者会見でブッシュ氏は、イラクのフセイン元大統領がアルカイダとつながっている証拠を示せるのかとの質問に対し、「大規模戦闘が終わってからまだ九十日だ。証拠を集めるには時間がかかる」とトーン・ダウン。九月中旬には、政府首脳が相次いで同時テロとフセイン大統領との関与を否定するに至りました。
ラムズフェルド国防長官は十六日の記者会見で、9・11テロにイラクのフセイン元大統領が関与したかどうかについて「信じさせる材料は見当たらない」と発言。米国民の69%が「関与している」と答えた世論調査結果に「同意しない」と明言しました。
十七日にはブッシュ大統領自身が記者団に対し、「フセインが9・11に関与した証拠を得ていない」と発言しました。
イラク戦争のもう一つの口実とされた大量破壊兵器問題では、政府首脳は最近では、問題に言及しないようになっています。イラクの兵器査察の責任者であったブリクス前・国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長は、十七日のオーストラリア国営ラジオで、「イラクが大量破壊兵器のほとんどを一九九一年の夏までに廃棄したとの確信をますます強めている」と発言。この問題でも米国の立場は大きく揺らいでいます。
経済学者でニューヨーク・タイムズ紙の著名コラムニストでもあるポール・クルーグマン氏は近著「大破たん」のなかで、「ブッシュ大統領は税金から戦争の説明に至るまであらゆることをごまかしている。ブッシュ氏ほどのうそつき大統領は米国にいない。こんな事例は現代米国史上にない」と厳しく批判しています。 (松本眞志記者)