2003年9月23日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントン22日遠藤誠二】一年前の国連総会一般討論で、対イラク戦争実行のため国際社会に協力を求めたブッシュ米大統領は、二十三日の初日に演説を予定。イラク侵略後、同国で続く混乱の事態を受け、資金提供や軍隊派兵などを各国に要請するものとみられます。
二〇〇四会計年度に八百七十億ドルの対テロ予算を議会に要求したブッシュ政権は、イラク復興政策をめぐる内外の批判を浴び、復興に関する権限を一部国連に移譲する譲歩をみせ、安保理での新決議採択を画策しています。
米国は、治安分野をめぐっては、「単一の司令のもと」(米国の新決議案)と、あくまでも米軍主導の立場を堅持しています。二十三日の米仏首脳会談、翌日の米独首脳会談が注目されますが、同問題をめぐり十三日にジュネーブで開かれた常任理事国外相会議では何ら成果が示されませんでした。米国とイラクへの速やかな主権返還を主張する仏独案は隔たりが大きく、米国務省は、イラクの新決議採択には「数日とも数週間ともいえない」(同省高官)と見通しの立っていないことを認めています。一方で、米メディアは、米国が新決議の修正案を提示する可能性を伝えています。
米英軍からなるイラク暫定行政当局(CPA)の権限を国連に移すことについてパウエル国務長官は、「突然、権限をすべて移すのは非現実的であり、うまくいかない」と否定的な見解を提示しています。フランスが主張する、イラク統治評議会への早期の権限移譲についても、「暫定評議会に能力が備わらないうちに(移譲の)プロセスを早め過ぎると、最悪のことが起きる」と指摘します。
ブッシュ大統領は二十日、米フォックス・テレビとのインタビューで、国連への大幅な権限移譲について、「なにをしなければいけないのか、確かではない」とあいまいな態度をとっています。
【パリ22日浅田信幸】フランスとドイツは十日、米国が提案したイラク新決議案に対し、(1)占領軍の暫定行政当局(CPA)の全権を国連事務総長に移す(2)早急にイラクの主権をイラク人の手に戻す(3)占領軍は国連軍のもとに編入する―を基本的な内容とする共同修正案を提出しました。
仏独両国は、米国案について、国連の関与を強める方向を持ったものと一定評価しています。しかし、米案はこれまでと同じ治安対策優先の論理に沿ったものであり、生命が危険にさらされるイラクにどれだけの国が兵を送る気になるだろうかと疑問を抱いています。
十三日の安保理常任理事国外相会議では「可能な限り速やかにイラク人の手に主権を戻す」ことが米国を含めて合意され、欧米の対立点は(1)主権の移行時期(2)国連の役割―の二点に絞られてきました。
主権の移行時期で、シラク仏大統領は「数年ではなく数カ月以内」を主張。その理由としてドビルパン仏外相は、外国軍の存在自体がイラク人の不満の的となること、また泥沼化した事態から脱出するためにはイラク人自身が主権をもってみずからの国の復興に取り組むという「政治的展望」を持つことが必要だと強調しています。この移行時期をめぐる米国との意見の相違について、仏外相は「われわれにはこれが出発点だが、米国の考えではむしろ到達点だ」とのべています。
国連事務所やイラク暫定統治評議会のメンバーがテロの対象になったことは、米軍による占領統治が継続する限り、国際的な支援も米国の手先としか見られない危険のあることを証明したものと仏独は見ています。このため、なおのこと強く、主権移行を早め、その過程を含めて米国主導の占領軍ではなく国連がコントロールできるよう米国側に迫る構えです。