2003年9月29日(月)「しんぶん赤旗」
「二〇〇五年、自民党の結党五十周年を一つの節目として憲法の改正案をまとめてほしい」。小泉純一郎首相は二十二日、内閣改造の記者会見で、歴代総裁として初めての自民党改憲案づくりを改めて表明しました。間近に迫った総選挙。第九条に焦点をあてた明文改憲を許すのかどうかは、二十一世紀の進路にもかかわる大争点です。
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小泉首相は、改憲案づくりを担う自民党執行部に、年来の改憲論者・山崎拓副総裁と、憲法を「戦後の呪縛(じゅばく)」と主張する若手タカ派の安倍晋三衆院議員を起用。山崎氏は、さっそく、〇五年までの改憲案づくりを、今度の総選挙公約とする考えを表明しています。
山崎氏は自民党幹事長当時、「来年か再来年の通常国会には、憲法改正のための国民投票法案を上程し、成立を期したい」(八月二十六日)とのべましたが、改憲派議員の集まりである憲法調査推進議員連盟では国民投票法案を作成ずみ。自民党総務会は了承、公明、民主など各党の了解を待つ段階にあります。
改憲の方針を固めているのは自民党だけではありません(表)。公明党は昨年の党大会で“加憲”という名の改憲論の立場を新たに打ち出しました。赤松正雄党憲法調査会事務局長は「“護憲”から“論憲”、そしていま“加憲”と変わってきた。改憲へ“い”の字がつくまでもう一歩」(七月二十五日、憲法調査議連総会)と公言しています。
民主党の岡田克也幹事長は、二十一日のテレビ番組で日本共産党の市田忠義書記局長から「(民主党の政権公約に)憲法についての部分が入っていない。改悪に反対の立場か」と問われ、「大いに議論する」とのべるだけ。九条について「変えないとは言わない」とのべました。枝野幸男政調会長は、民主党には「護憲を貫く議員はいません」と明言しています(二十七日放送のCS番組で)。
憲法「改正」は国民の要求ではありません。世論調査で憲法改正に「賛成」が増えてきているのは事実ですが、憲法九条「改正」に「反対」や、「九条は平和の基礎」とする立場が多数派です。
ではなぜ、九条に焦点をあてた改憲論が噴出しているのか。二〇〇〇年十月、アーミテージ氏(現米国国務副長官)が中心になって対日報告書を作成。「日本が集団的自衛権を禁止している」ことが日米共同の軍事作戦の障害となっていると指摘し、「この禁止事項を取り払うことでより緊密で、より効果的な安全保障協力が可能となる」とのべました。日米共同で海外で武力行使するためには憲法が邪魔―ここに現在の改憲論の大きな源があります。
山崎拓自民党前幹事長は、9・11テロの後、「(テロとのたたかいで)英国は集団的自衛権を発動して(アフガン戦争に)参戦したが、日本は集団的自衛権を発動しないことになっている。…これ以上の貢献をするには憲法を改正して集団的自衛権を行使できるようにしなければなりません」(〇一年十月十日)とのべています。
日本共産党は、第二十三回党大会に提案する綱領改定案で、日本の民主的改革の内容として、「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的条項の完全実施をめざす」と明記。この立場から、大会決議案では、危険な改憲動向に警鐘をならし、「憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点での、広い国民的共同」を呼びかけています。
日本国民が世界に誇る「平和の宝」というべき憲法九条を守ることは、日本の平和と安全を守るうえで不可欠です。それは、米国の一国覇権主義を許さない世界をつくることとも結びついています。
逆に、改憲の道はアメリカの要求に従い、アメリカが世界で起こす戦争にいつでもどこでも自衛隊がはせ参じて協力する体制にとっての障害をすべて取り払うことになります。文字通り日本を本格的な「海外派兵国家」に仕立て上げ、「戦争する国」へと導くものです。
総選挙で憲法擁護の首尾一貫した立場を持つ日本共産党の躍進を勝ち取ることこそ、改憲勢力への最も明確な審判となり、その策動を封じる確かな道です。