2003年9月30日(火)「しんぶん赤旗」
「生活不安を深刻にする政治を続けるのか。それとも国民だれもが安心して暮らせる日本にするのか」―日本共産党の志位和夫委員長は二十九日の代表質問で、「日本経済の三つの改革」を提案し、自民党政治の根本的転換を迫りました。
第一の改革は、「税金の使い方を改革し、社会保障を予算の主役にすえること」です。
サラリーマンの医療費自己負担の引き上げ、物価スライド凍結解除による年金給付の削減などが強行され、暮らしの安心の支えとなるべき社会保障が不安を増大させる原因となっています。
ところが、小泉内閣は「高齢化社会だから仕方がない。いやなら増税だ」という姿勢です。
志位氏は、国民が国と地方に納めている税金のうち、社会保障への公費負担となって返ってくる比率=「見返り率」の国際比較を示しました(グラフ上)。
アメリカ47%、ドイツ44%、イギリス43%、スウェーデン43%なのにたいして、日本はわずか29%でサミット諸国中最低です。
欧米並みに引き上げると、税負担は今のままでも十兆円を超える新たな社会保障財源が生まれ、当面の医療、年金、介護を充実させる財源は十分にまかなえます。
志位氏は「日本の社会保障が貧しいのは、国民の負担が少ないからではなく、予算の優先順位を間違えているからだ」と指摘、公共事業費と軍事費の二つの分野に抜本的なメスを入れるよう求めました。
五十兆円まで膨れ上がった公共事業費は、バブル前の二十五兆円程度の水準まで削減。川辺川ダムや諫早湾干拓、関西空港二期工事など巨大開発を中止するとともに、内容を福祉・環境型に転換して雇用を確保します。
五兆円にまで膨張した軍事費を「聖域」とせず大幅軍縮に転じます。
とくに、(1)ヘリコプター空母など海外派兵のための新規装備購入計画の中止(2)一兆円規模の支出をともなうアメリカの「ミサイル防衛戦略」への参加を中止(3)毎年二千五百億円にのぼる米軍への「思いやり予算」の廃止―を求めました。
小泉首相は、大型開発は続けながら「総額を抑制しつつ重点分野に大胆に配分した」とのべ、「思いやり予算」についても「引き続き負担していく」と答えました。
第二の改革は、「消費税の大増税を許さないこと」です。
首相は「三年間の任期中は上げない」といいますが、「三年間かけて増税の環境を着々とつくる」というのが本音です。
志位氏は、消費税は所得の少ない人に重くのしかかる最悪の不公平税制であり、中小零細業者の営業破壊税、景気破壊税だと指摘。この消費税を税制の中心にすえることは「最悪の選択」だと批判しました。
消費税増税が「社会保障充実の財源のため」という口実について、社会保障の切り捨てが続いてきたのが現実だとのべ、消費税導入から十五年間の消費税収と法人三税(法人税、法人住民税、法人事業税)の税収を対比しました(グラフ下)。
消費税収の累計が百三十六兆円にのぼるのにたいして、法人三税は同じ時期に百三十一兆円も落ち込んでいます。景気悪化による税収減に加えて法人税率を42%から30%に引き下げるなど、大企業のための減税が繰り返されてきたためです。
志位氏は「社会保障の財源のためではなく、大企業の負担軽減のため―ここにこそ消費税増税の真実がある」と追及。社会保障を支える財源として、まず浪費を一掃する歳出改革をすすめるとともに、負担能力に応じた税負担の原則にもとづいて大企業や高額所得者に応分の負担を求める、税制と社会保障制度の民主的改革を提唱しました。
小泉首相は声を荒らげて「上げないといっている。間違えないでください」とのべたものの、「その間、徹底的な行財政改革をやる」とのべ、社会保障の切り捨てで耐え難いところに追い込んでおいて増税を押しつける姿勢をうかがわせました。
第三に、「ルールある経済社会」をつくる改革を提案した志位氏は、焦眉(しょうび)の課題は雇用をささえるルールをつくることだ、と三点を提起しました。
一つ目は、長時間労働を是正し、「サービス残業」を一掃して新しい雇用を増やす本格的とりくみです。志位氏は、「サービス残業」を繰り返している企業名の公表、入退社時間の記録をはじめ企業責任での労働時間管理の徹底など、無法行為の一掃に政府あげてとりくむべきだと要求しました。小泉首相は「政府としてサービス残業の解消につとめる」と答えました。
二つ目に、政府と大企業の責任で若者に仕事を保障するよう求めた志位氏。「若者を『使い捨て』にする企業と社会に未来はない」とのべ、大企業に若者の雇用責任を果たさせるため、実効ある施策を求めました。
三つ目は、人減らし応援の政治を根本から見直すことです。志位氏は、企業のリストラ計画を国が承認し、金融・税制上の優遇措置を与える「産業活力再生法」をとりあげ、二百十七社の人員削減八万九千二十五人、減税額八百十億二千五百万円が認定されていると指摘。「世界に例のない異常なもの」だと批判し、雇用不安を広げる企業に減税するという逆立ち政策の中止を求めました。
90年代に50兆円まで異常膨張した公共事業費をバブル前の25兆円まで段階的削減。5兆円にまで膨らんだ軍事費を大幅軍縮に転じる
「応能負担の原則」で、大企業や高額所得者に応分の負担を求める税制と社会保障制度の民主的改革
〇とくに雇用を支えるルールをつくる
(1)長時間労働の是正、「サービス残業」の一掃で、新しい雇用を
(2)政府と大企業の責任で、若者に仕事を保障
(3)人減らし応援の政治を根本から見直す
日本共産党の志位和夫委員長は二十九日の衆院代表質問で、小泉内閣のアメリカいいなり政治、憲法改悪の策動について追及しました。
「こんな米国いいなりの政治を、二十一世紀もつづけるつもりなのか」。志位氏は、イラク戦争を支持し、さらにイラクへの自衛隊派兵を進めようとしている小泉首相を厳しく追及しました。
志位氏は、アナン国連事務総長が米英軍の先制攻撃を「国連憲章の原則への根本的な挑戦」と批判したことを紹介。イラク戦争の口実となった大量破壊兵器は、米国調査団も発見できていないと指摘し、イラク戦争を支持した誤りを認めるべきだと強調しました。
イラク国内では米軍への攻撃が相次ぎ、情勢が泥沼化しているなかでの自衛隊派兵は、「同じ泥沼のなかに身を沈めることになる」として、イラク派兵中止とイラク派兵法そのものの廃止を要求しました。
同時に、テロ特措法の延長に反対し、インド洋に派遣している自衛隊の即時撤退を求めました。
志位氏は、首相が国会で追及されて苦しくなると、必ず「日米同盟のため」との決まり文句を持ちだすことについて、「『日米同盟のため』なら無法な戦争も支持し、憲法も無視し、どんなことでも許されるというのか」とただしました。
首相は「世界のなかの日米同盟をいっそう強化する」とのべ、米国いいなりの政治をさらに拡大・強化する考えを表明しました。
志位氏は、日米同盟を絶対不可侵とする勢力には「日本の独立も改革も語る資格はない」と批判し、「二十一世紀の日本の未来は、日米安保条約をなくし、本当に独立した平和日本をつくることにこそある」と表明しました。
「憲法九条を壊すのか、それとも憲法九条を生かした平和日本を築くのか―これも二十一世紀の日本の進路を分ける大問題です」
志位氏は、首相が二〇〇五年十一月の自民党結党五十周年をめどに、自民党の改憲案をまとめるよう指示したことについてただしました。
第一は、憲法のどこを変えようとしているかです。首相は「自衛隊が軍隊であると正々堂々といえるように、憲法を改正するのが望ましい」と明言しており、憲法九条改定を含むことは明りょうだと指摘しました。
第二は、なぜいま九条改定かという問題です。志位氏は、九条に照らして許されないという政府の建前さえ踏みこえて、集団的自衛権の行使を可能にし、米軍が地球的規模で行う戦争に、自衛隊が何の歯止めもなく参加できるようにすることに、改憲論の目的があると指摘しました。
第三は、米軍の戦争はどのような戦争かという問題です。志位氏は、米国は国連を無視した先制攻撃・単独行動戦略を取っていると指摘し、これへの参戦体制づくりのための改憲は、国連憲章の原則への挑戦になると批判しました。
志位氏は、憲法の擁護は日本の恒久平和の進路を確保するだけでなく、米国の一国覇権主義を許さず、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築く上でも重要と主張。憲法改悪の策動の中止を求めました。
首相は九条改憲のねらいは否定せず、「憲法は不磨(ふま)の大典ではない」として、憲法改定論議を当然視しました。