2003年10月10日(金)「しんぶん赤旗」
九日に行われた日本共産党の志位和夫委員長の小泉純一郎首相に対する党首討論(大要)は次のとおりです。
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志位委員長 私は、きたるべき総選挙でも熱い争点の一つになるであろう年金問題についてうかがいます。
今年につづいて、来年も物価の下落にあわせて年金の削減の計画がすすめられ、財務省案によりますと、お年寄りで一世帯あたり六万円の年金が削られようとしています。さらに来年は、将来にわたって負担増、給付減のレールをしく年金の大改悪の計画もすすめられようとしています。国民のみなさんの年金にたいする不信、不安は非常に深刻なものがあります。
これをどう解決すべきか。私たち日本共産党は、将来に安心がもてる年金制度を築くために、まず当面、三つの改革が必要だと主張しています。
第一の改革は、基礎年金への国庫負担を、現行の三分の一から二分の一にただちに引き上げること。
第二の改革は、リストラの横暴をおさえて、雇用と所得をまもる政策への転換で、年金の安定した支え手をふやすこと。
そして第三の改革は、百七十五兆円にのぼる巨額の年金積立金の活用です。給付額の六年分もの巨額の積立金をためこんでいる国というのは、世界に例がない。これを計画的にとりくずすべきだ。
そして将来には、基礎年金部分を発展させて、国費と事業主の負担による「最低保障年金制度」を創設する。このことも私たちは提案しております。
こうして将来にわたって安心できる年金制度をつくりあげるというのが、わが党の提案であります。
志位 今日、総理にただしたいのは、その最初にまず問題になってくる基礎年金の国庫負担の問題です。負担額を三分の一から二分の一に引き上げるということは、九四年の国会決議に明記されたことです。さらに二〇〇〇年の年金改悪のさいに、法律の付則で「二〇〇四年までに引き上げる」と国民に約束したことです。年金財政を安定させるうえで、待ったなしの課題であります。
わが党は法律どおり、来年度からただちに負担率を二分の一に引き上げるべきだという立場であります。その財源――二兆七千億円については、公共事業費の削減、道路特定財源を一般財源化すること、さらに軍事費を「聖域」にせず軍縮への転換をはかることなど、無駄な歳出の削減でまかなうべきだし、まかなうことができるというのがわが党の立場です。
これは、国民の多数の声でもあります。今年一月に発表された日本世論調査会の「年金世論調査」によれば、「年金制度を維持するために、どうしたらよいと思いますか」との質問に、「国の歳出を見直し、ほかの支出を削って年金に振り向ける」と答えた方が58%でトップです。
そこで、総理に二点うかがいたい。
まず第一。来年度から約束どおり負担率を二分の一に引き上げる意思があるのかどうか。
第二。引き上げるさいの財源の問題です。与党のなかには、所得税の定率減税を廃止する――これは庶民増税になるわけですが――それでまかなうことを方針としている政党もあります。財源は、無駄な歳出の削減でまかない、庶民増税にもとめることはないとはっきりいえますか。かりに財源を新たな庶民増税にもとめれば、経済に打撃をあたえ、年金の支え手をさらに壊すことになり、悪循環を引き起こします。そういうことをしないとはっきりいえるかどうか。端的にお答えください。
小泉純一郎首相 今、財源の話をされましたけども、三分の一から二分の一に引き上げることは、法律で明記されています。その点について、年内には具体的な案が明らかになって、来年には法案が出せます。しかし、二分の一に一年間でするかどうかというのは、まだ決めていません。単年度でやるか、あるいは複数年になるか。
それから給付と負担の問題につきましても、これは消費税とか今、所得税の定率減税の話をされました。これも、安定した財源を確保して、持続可能な制度にしなければならないのが基本であります。けっして破たんさせてはいけない。
なおかつ、財源の問題については、年金だけではありません。医療、介護、年金、これはそれぞれ保険料負担を国民はしております。税金も、負担しております。そういう観点から、年金だけをとりあげるのではなくて、年金も医療も介護も、総合的に社会保障としてどうやって持続可能なよりよき制度にするかという観点で、この年金改革案も考えなくてはならないと思っております。
そういう点において、私は現在、すぐ消費税をあてるのか、あるいは所得税の定率減税をあてるのかという段階にはないということもご理解いただきたい。
しかし、確実なのは、公的年金制度は、絶対に破たんさせないということであります。高齢者と若い世代がお互い支えあっていく大事な制度でありますので、この点については、私は各界、各層のご意見を聞きながら、よりよい案を来年の国会に提出したいと思っております。
志位 私が質問したことに、きちんとお答えになっていない。
私が(基礎年金への国庫負担を)来年引き上げるべきだといったことに対して、「一年で引き上げるかどうかはわからない」といいました。その姿勢が、年金不信を生んでいるんですよ(「そうだ」の声)。
これは法律の付則に書いてある。これは条件なしに、おそくとも二〇〇四年度までには引き上げるということが、法律に書いてあることですから、それがまだ言えないということでは、これは本当に国民のみなさんの不信を高めることになると思います。
志位 そこで私たちは、さきほどいったように、歳出を削減する。例えば道路特定財源、これは六兆円でしょう。そのうち国税分だけでも四兆円でしょう。これを一般財源にして、そのうちの一部を福祉にあてる。そういう決断をやれば、政治の姿勢一つで、財源は出てくるじゃないかと、私はそのことをいっているんです。
私たちは、もちろん、将来的には当然、新しい負担が求められるときがくる、そのときには、大企業や高額所得者には応分の負担を求めるという立場でありますが、しかし、当面は歳出の無駄を削れば、安定した財源がつくれるんです。
この問題についてもう一回聞きます。その当面の財源を、庶民の増税に求めないとはっきり言えるのかどうか。さきほど、定率減税の話について、はっきりしませんでしたね。定率減税、これを廃止しないと、手をつけないといえますか。はっきりうかがいます。
小泉 庶民の増税とか減税とかいうもんじゃありません。税金は国民全体で負担するんですよ。(志位「否定できるのか」とただす)
先ほど道路特定財源の話が出ましたけども、これだって見直しするのはいいですよ。しかし、特定財源を一般財源にしたら、ガソリン税とか自動車重量税とかどうなっちゃうんですか。これ一般財源にするんだったら、自動車重量税なくしてくれとか、ガソリン税下げてくれという声が必ずおこりますよ。何のために特定財源にしているのかと。見直すのはいいですよ。一部だけ取り出して、これをなくせ、一般財源にしろというのは、これはこれからの議論で積み重ねて、あるべき財源を見つけるのが筋だと私は思っております。
志位 道路特定財源を一般財源にするのは総理の主張でもあったということを一言のべ、そして増税を否定しなかったというのは重大だということをのべ、質問を終わります。