2003年10月11日(土)「しんぶん赤旗」
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みなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。日本共産党の不破哲三でございます。今夜は風の冷たいなか、たくさんの方が私どもの街頭演説に足を止めていただきましてありがとうございます。まず最初に心からお礼を申し上げます。(拍手)
みなさん、いま志位さんから、日本の政治をどう改革したらいいのか、日本共産党の考え方をお訴えしました。私は、それに加えて、きょうの国会解散で始まる総選挙には、二十一世紀を迎えた日本の今後、国民の暮らしの今後がかかっているということを、訴えたいのであります。
自民党・政府・財界は、総選挙を前にして、自分たちの二十一世紀の大戦略を明らかにしてきました。私どもが追及しますと、そんなことはないといろいろごまかしてまいりましたが、実は、きょう自民党は、今度の選挙の「政権公約」、「小泉改革宣言」というものを発表しました。そのなかには、私たちが言ってきた彼らの大戦略がはっきり書いてあるのです。
そこには、七つの宣言があります。「宣言1」は、「日本の未来を創ります」ですが、そのなかに社会保障の財源として、消費税率の値上げをめざす―「将来の消費税率引き上げについても国民的論議を行い、結論を得る」とはっきり書いてあるのです。
憲法の改悪の問題についても、「宣言5」には、「国の基本を見直します」という看板で、「2005年、憲法改正に大きく踏みだします」、このことを、自民党の総選挙の「政権公約」にうたっているわけであります。消費税の増税も「国民的論議」と言っておりますが、値上げについて論議をし結論を出すというのですから、増税という方向は明りょうであります。
みなさん、私は、どちらの計画も、二十一世紀の国民の暮らし、日本の平和を、とんでもないところにもっていく大攻撃だということを、みなさんに訴えたいのであります。(拍手)
まず、消費税の増税からみてみましょう。
だいたい、日本の税金を消費税中心に変えるというのは、自民党と財界の以前からの大方針でした。この税金は、何よりも弱い者いじめを特徴とする税制です。
だいたい税金というものには、昔から原理・原則があります。
国民が必要としている生活費には税金はかけないという、生計費非課税。
所得に応じて、所得の多い人には重い税金を払ってもらう、所得の少ない人には少ない税金で応じてもらうという、累進課税。
この生計費非課税と累進課税というのが、いわば経済の民主主義の大原則です。これまでの日本の税金は、大枠この原則に従っていました。
それを大もとからひっくり返そうというのが、実は消費税なのです。
消費税は、いま、5%の税率です。金持ちであろうが貧しかろうが、所得が多かろうが少なかろうが、だれにも5%の税金がかかる。生活費に使う品物を買っても余分なものを買っても、同じように消費税がかかる。これだけでも、大原則が崩れているではありませんか。
また、大企業は消費税がかかっても、その分を物価に上乗せできますから、自分は負担しないですみます。しかし、中小企業のみなさんはそういきませんから、これが重くなればなるほど、ひどい中小企業いじめになります。
さらに悪いことは、パーセントで決まる税金ですから、国会でパーセントの数字をちょっと変えれば、たちまち重い税金がかかる。3%を5%にしただけで、あれだけの大被害が広がったではありませんか。こういう税金であります。
ところがみなさん、いま自民党と財界が計画しているのは、その弱い者いじめのひどい税金を、いまの二倍、三倍にしようという、とほうもない計画であります。
財界団体の日本経団連は、ことし、提案を次つぎと発表して、消費税をまず二ケタにしよう──二ケタというのは最低でも10%、いまの二倍です、ゆくゆくは18%にしよう──なんといまの三・六倍です。これが、財界が旗を振っている増税の大計画であります。
こんな勝手放題が許されるか そうなったら、いったいどんなことになるでしょう。いま、消費税の総額は、十二兆五千億円ですが、これが二倍の10%になれば、二十五兆円になります。18%なら四十五兆円になります。ことしの予算で国民からとりたてる税金の総額は、所得税から企業のはらう法人税まで全部含めて七十六兆円余りですから、だいたいいまの税金総額の六割近くを、消費税として、みなさんの毎日の売り買いからとりたてるようになる。こういう、とほうもない計画を、財界が中心に立てているわけであります。
国民の負担はたいへんです。いまの5%の消費税を、お年寄りから赤ちゃんまで国民一人当たりで割りますと、一人当たり十万円の負担です。それが10%になったら一人当たり二十万円の負担、18%になったら一人当たり三十五万円の負担です。そういうことを国民に求めながら、財界の要求は、「おれたちにかける法人税はもっと下げろ」です。みなさん、こんなに虫のいい、勝手放題の要求はないのではないでしょうか。(「そうだ」、大きな拍手)
財界はそのいいわけに「消費税をとりたてて、社会保障の財源にする。それなら文句はないだろう」といいます。しかしみなさん、社会保障とは、立場の弱い者を助けるのが、いちばんの柱ではありませんか(拍手)。その社会保障をやるというのに、弱い者いじめの税金を二倍にも三倍にもしようとする、社会保障の精神をこれぐらい踏みにじる話はないではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
社会保障に財源が必要なら、いま志位さんから話があったように、税金のムダ遣いをどんどん改めて、せめてヨーロッパ並みのまともな使い方にする。それだけで、十兆円以上の新しい財源ができる。日本共産党はその道筋を立派に示しているわけであります。
そして、さきざきもっと新しい財源がいるという場合がおきたときにも、社会保障のための財源なら、弱い者をいじめない財源のとり方──所得の多いものには余分に負担してもらう、生活費にはかけない、こういう経済の民主主義にそった負担の仕方を考えるのが、当たり前ではないでしょうか。(拍手、「そうだ、その通り」の声)
みなさん、消費税大増税のとんでもない計画が、財界中心に立てられている。それにたいする態度を追及すると、小泉首相は「私は消費税は上げないといっているじゃないか」と、国会で昨日まで言い張ってきました。
しかしみなさん、いよいよこれからの日本を問題にする「政権公約」を自民党が発表したら、そのなかに、“消費税は値上げをする方向で議論をやって結論をだす”、そういうことがはっきりうたわれているのです。
自民党が選挙に勝ったら、国民がこれを信任したのだといって、増税にすすもうとしていることは、間違いないではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
一体、この計画をそのまま強行させていいのかどうか、みなさん、どうお考えでしょうか。(「反対」の声)
みなさん、今度の総選挙を、国民を踏みつけにするこの計画にたいする大反撃の選挙、それを絶対食い止める選挙戦にしようではありませんか。(拍手)
彼らの大戦略のもう一つは、憲法の改悪であります。
小泉首相は、総裁選挙のときから、再来年は、自民党の五十周年だから、十一月までに自民党の「憲法改定案」をつくると、いっていました。ところが「政権公約」はもっと前にすすんで、「2005年、憲法改正に大きく踏みだします」と、さらに強引な方針を宣言しました。
そのねらいは、みなさんもおわかりのように、憲法の平和の条項、第九条に一番の攻撃目標があります。
第九条というのは、戦争の放棄、無法な戦争はやらないということと、そのために軍隊をもたないということ、その二つのことを明確に定めた平和の条項であります。
この条項には、日本の国民の、あの戦争中のたいへんな苦難の歴史とその反省がこめられています。戦前の日本は、無謀なアジア侵略の戦争に踏み出したために、アジアの諸国民に二千万人を超える大きな犠牲を与えました。日本の国民自身も、あるいは戦場で、あるいは本土の空襲で、沖縄で、そして広島、長崎で、三百十万人にのぼる大きな犠牲者を出しました。
日本共産党は、この戦争に反対し、また、天皇ではなく、国民が主人公の民主政治を実現しよう、このことを主張してがんばったために、多くの先輩が命を落としました。そういう歴史をもっています。それだけに、私たちは、平和の条項をもち国民主権の原則を刻み込んだこの憲法を、どんなことがあっても守りぬく決意であります。(拍手)
実際、世界でも日本の憲法で一番有名なのは第九条であります。アメリカにも、「九条の会」といって、日本の憲法の精神を世界に広めようという会ができています。アジアの多くの国ぐにからも日本はああいう戦争をやった国だが、この九条をもった国だから平和の国として信頼できると思ってきた、こういう声がいたるところにあります。
しかも、みなさん、いま世界では、多くの国ぐにが平和のルールが守られる世界をつくるために、本当に心を砕いています。だからこそ、アメリカは超大国だといっていばっていますが、そのアメリカがルール破りのイラク攻撃の戦争をやったら、世界中が非難の声をあげて立ちあがったではありませんか。(拍手)
いまこそ、第九条の平和の精神をもって、日本が平和外交で世界に乗り出すべきときではありませんか。(拍手)
日本の国内でも、この憲法の精神をつかむことは、いよいよ大事になっています。平和とは、人間の命をなによりも大事にすること、民主主義とはなによりもお互い人間として尊重しあうことです。憲法の平和と民主主義の精神こそ、荒廃が問題となっているこの日本社会を、道理の面で立て直すための力強い柱になるではありませんか。(拍手)
自民党はこの憲法とは反対の道を進んできました。自衛隊をつくって、しかもどんどん大きくし、とうとうアメリカの言いなりに海外に出すということまでやってきました。
しかし、みなさん、いくら自民党でも、そして憲法のすきをねらっている小泉さんでも、いまの憲法第九条があるかぎり、自衛隊を海外に出して“戦争をやります”とは言えないのです。インド洋に自衛艦を出したが、“戦争行為には参加しません。後方で給油の活動をやっているだけです”、“危ない所には自衛隊は出しません”。そういう言い訳をたえず国会でやっています。
それがアメリカには気に入らないのです。日本はそんな憲法に気がねしないで、平気で軍隊を出せる国になりなさい、これがブッシュ大統領とアメリカ政府が、日本の小泉内閣、自民党に対してたえずくわえている圧力であります。
その要求に素直に応えて、今度はいよいよ憲法改悪にとりかかろう、二〇〇五年には「憲法改正に大きく踏みだします」──このことを宣言したのは、小泉内閣が歴代自民党政府のなかで初めてであります。みなさん、こんな暴挙、絶対に許すわけにはゆかないではありませんか。(拍手)
消費税大増税と憲法の改悪。こんな暴挙を許せないと思う方は、この二つの計画に正面から反対している政党、日本共産党へのご支持をお願いしたいのであります。(拍手)
みなさん、この問題で問われているのは、小泉自民党政治が良いか悪いかだけの問題ではありません。野党のあり方も大きな争点として問われています。
私は、今度の選挙を前にして、新民主党が発表した「政権公約」を見てびっくりしたのです。消費税増税への反対もない。憲法改悪への反対もない。ないどころか、実際には財界や自民党の手助けをするような政策になっているではありませんか。
社会保障の財源の一部に消費税をあてて、ゆくゆくは消費税の税率アップも考える。日本経団連の言い分そのままのことが、そこに書かれてありました。
憲法の問題も大いに議論しようじゃないかという「論憲」から、さらにすすんで、新しい憲法をつくる「創憲」ということまで、「政権公約」に書きこみました。
中身が違うと民主党は言うかもしれません。しかし、みなさん、与党と声を合わせて、消費税増税が必要だ、いまの憲法に代わる新しい憲法をつくりたい、そういうことを唱えるのでは、憲法改悪、消費税大増税の世論づくりの応援を買って出たことになるではありませんか。
民主主義と平和を真剣に守る考えを持っている政党であるなら、自民党小泉内閣が、アメリカの戦争に参加するという思惑をもって憲法改悪の旗を掲げた時、自分も憲法改定を唱えて、その応援をするなどということは、絶対にできないはずではありませんか。(拍手)
国民の生活を守ることを真剣に考える政党であるなら、財界が二ケタ大増税の目標を大々的に打ち出した時に、自分の方から消費税増税を唱えるなどの政策は言えないはずではありませんか。(「その通り」の声)
“政権交代”をしても心配ない政党だぞ、そういうことを宣伝したいがために、そういうことを財界の陣営やアメリカにわかってもらいたいがために、悪政に反対する野党の責任を忘れてしまう。そしてあえてこういう「政権公約」を打ち出したのだとしたら、これはまさに、野党の立場と責任を投げ捨てるものではありませんか。(拍手、「そうだ」の声)
ここでは、まさに野党のあり方が問われているのであります。
いまの日本の政治では、悪政に正面から立ち向かう“野党らしい野党”、それこそが国民にとっても、国の政治にとっても、必要なのであります。“政権入り”に気をとられて野党の責任を投げ捨てたり、自分から野党としての立場を掘り崩してしまうような政党では、国民の利益は守れないのであります。(拍手)
みなさん、国民とともに悪政と対決する政党、国民のための改革を真剣に追求する政党こそが、本当の意味で日本に新しい政治を起こす力を持てます。新しい政権を準備する大道はここにあります。日本共産党はいついかなる場合でも、この立場を守り抜く政党であります。(拍手)
みなさん、私は、この日本に生き、子どもたちや孫たちのために、明るい未来を望むすべてのみなさんに、この重大な選挙で日本共産党へのご支援、ご協力を心からお願いするものであります。(拍手)
みなさん、明日の日本のために、みんなで知恵と力を尽くして頑張ろうではありませんか。(大きな拍手)