2003年10月11日(土)「しんぶん赤旗」
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衆院が解散された十日、東京・新宿駅東口でおこなった、日本共産党の志位和夫委員長、不破哲三議長の演説(大要)は次のとおりです。
みなさんこんばんは(「こんばんは」の声、拍手)。日本共産党の志位和夫でございます。国会が解散され、いよいよ総選挙です。国会を解散して、国民の審判を仰げということは、わが党がかねてから主張してきたことであります。ですから、私たちは堂々と受けてたち、かならず前進、躍進を果たしたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
この総選挙は、二十一世紀はじめての総選挙です。二十一世紀に、日本がどういう進路を選択するのか、このことが大きく問われる選挙であります。
私が、最近の世論調査でたいへん印象に残った二つの結果があります。一つは、政府が八月に発表した「国民生活に関する世論調査」で、「生活の不安」を訴えられた方が67%と、史上空前となったことであります。もう一つは、今月に入ってある民放のテレビ局がおこなった世論調査で、「イラクへの派兵反対」と答えた方が66%となったということであります。つまり、三人に二人の国民のみなさんが、暮らしと平和に大きな不安を持っている、これが現状ではないでしょうか。(拍手)
この不安をどうやって解決し、安心して暮らせる日本、平和な日本をつくっていくか、そのための日本改革の提案をしっかり示しているのが、日本共産党であります。(拍手)
まず、経済の改革です。ここで、一番大事なことは、経済の力の六割を占める国民のみなさんの家計を応援することです。ところが、小泉政治には、この考え方がまったくありません。小泉さんは、「構造改革の芽が出た、木に育てていくことが大切だ」といいました。しかし、みなさん、小泉内閣が構造改革の名でやってきたことはなんでしょう。医療費の値上げで、お金の心配でお医者さんにいけなくなる方を増やしている。リストラ応援の政治で、失業者が街にあふれています。「不良債権の処理」の掛け声で、がんばって仕事を続けている中小業者のみなさんを、大銀行のえじきにして無理やりつぶす。一番大切な国民のみなさんの暮らしを押しつぶし、暮らしの芽をふみつぶすことばかりが、やられてきたのではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
大企業や大銀行のもうけを応援する政治から、国民の暮らしを応援する政治に改革をはかる、これが日本共産党の提案です。
その第一は、税金の使い道を変え、社会保障と暮らしを予算の主役にすえる改革であります。
私は、先日の国会の代表質問で、国民のみなさんが払った税金のうち、社会保障の支出となって返ってくる割合がどうなっているか、国際的に比較した数字を示しました。日本はこの割合が29%です。つまり、国民のみなさんが十万円の税金を払ったとしますと、そのうち、社会保障にあてられるのはたった二万九千円ということになります。欧米諸国はどうか。調べてみますと、だいたい四十数%です。つまり、おさめた税金の半分近くは社会保障にあてている。これが当たり前の姿になっているのであります。
みなさん、税金の使い道を、欧米諸国並みの、世間並みの姿にすれば、みなさんの負担は増やさなくとも、新たに十兆円を超える社会保障を充実するための財源をつくることができます。十兆円あれば、いま問題になっている年金問題でも、基礎年金の国庫負担の割合をただちに三分の一から二分の一に引き上げて、安心した制度の土台を築くことができます。三割負担に引き上げられた医療費を元に戻すこともできます。介護保険についても国の制度として保険料と利用料のしっかりとした減免制度をつくることができます。
みなさん、予算の使い方を変えればずいぶんと夢も希望もある政治に切り替わるではありませんか。(拍手)
そのために「逆立ち」した税金の使い方をあらためる。九〇年代に五十兆円まで膨れあがった公共事業は、巨大開発の無駄遣いをやめて、中身を福祉・環境型に切り替え、雇用を確保しながら、段階的に二十五兆円まで半減する。五兆円の軍事費を「聖域」にせず、抜本軍縮に転換する。こうして社会保障と暮らしを予算の主役にすえようじゃないか。これが日本共産党の提案でございます。(拍手)
第二の提案は、国民の暮らしと権利を守る“ルールある経済社会”をつくろう、ということです。
日本では、ヨーロッパでは当たり前の暮らしを守るルールがありません。「ルールなき資本主義」の国といわれています。たとえば、雇用を守るルールがあまりにも貧困ではないでしょうか。
いま大企業のリストラ競争のもとで職場がどうなっているでしょうか。二つのたいへんなことが起こっています。一つは、正規社員を減らし、パート、アルバイト、派遣労働など、不安定な仕事に置き換える動きです。もう一つは、とほうもない長時間労働です。ドイツに比べて日本の労働時間は年間四百五十時間も長いんです。過労死や過労自殺があとを絶たないというのは、ほんとうに痛ましい事態ではないでしょうか。
そしてみなさん、私が、心が痛むのは、その矛盾の集中点に若者が置かれているということです。私は、七月の党首討論で若者の雇用問題を取り上げました。いま大学を卒業しても、就職率は55%です。五人に一人の若者が、フリーターという不安定な職についています。「自分は社会に必要とされていないのではないか、人間として否定されたつらい気持ちになる」。多くの若者から私は訴えられました。
みなさん、人間はモノではありません。いつでもクビにでき、低賃金でこき使い、教育訓練もしない。そういう若者を使い捨てにするような社会と企業には未来はないということを私は訴えたいと思うのであります。(「そうだ」の声、拍手)
みなさん、長時間労働をただし、「サービス残業」をなくせば、解決の道が開かれます。第一生命経済研究所の試算では、「サービス残業」をなくしただけで、このただ働きの無法を一掃しただけで、百六十万人の雇用が増やせます。それだけ雇用が増えれば、経済も活発になって、GDPは2・5%引きあがる。
みなさん、大企業に対して世間並みのルールは守りなさい。無法はやめなさい。雇用への社会的責任を果たしなさい。このことを日本共産党はみなさんとご一緒に強く求めていきたいと思います。(拍手)
第三は、経済までアメリカに指図される現状から抜け出す改革であります。たとえば「不良債権の早期処理」の掛け声で中小企業を無理やりつぶす政治が、どこからはじまったか。アメリカの指図ではじまりました。この政治のもとで中小企業のみなさんが、どういう状況に置かれているでしょうか。貸し渋り、貸しはがしを選ぶのか、それとも貸出金利の引きあげを我慢するのか。まさに地獄の二者択一が押しつけられています。調べてみますと、小泉政権の二年間で、銀行の中小企業向け貸し出しは、なんと四十七兆円も減りました。貸出総額の二割も減りました。金融といえば血液です。人間だって血液の二割も抜かれたらふらふらです。日本経済の主役の中小業者のみなさんを、こんな状態に置いている政治が許されるでありましょうか。(拍手)
アメリカいいなりに、大銀行をもうけさせるためには日本経済の主役──中小企業をつぶして、なんの痛みも感じない。この政治を大もとからただそうではありませんか。(拍手)
つぎに外交・安保の問題です。私は、日本の政府ほど自分の考えというのを持たない政府はないと思います。イラク戦争ではそれがむき出しになりました。小泉首相が大事な節々で述べた発言は、すべて自分の判断ではありません。ブッシュ大統領が言ったことをうのみにし、おうむ返しにしたことだけです。戦争を支持したことも、支持の口実に大量破壊兵器をもちだしたことも、それが見つからないことを私たちが追及したさいに、「フセインだって見つかっていないが、いなかったことにならない」と荒唐無稽(むけい)な言い訳をしたことも、すべてが、アメリカの言い分をうのみにし、おうむ返しにしただけではありませんか。こんなアメリカいいなりを二十一世紀も続けていいのか。外交・安保も大改革が必要ではないでしょうか。(拍手)
その第一に私が訴えたいのは、自衛隊の海外派兵をやめさせること、いまからでもイラク派兵を中止することであります。(拍手)
十七日にブッシュ大統領が来日し、ヒトとカネを出せといいに来ます。しかし、イラクの現実はどうなっているか。国連のイラク事務所が詳しい現状報告をしています。最近の十八日間だけをみても、三百四十九もの武力事件がイラク全土で起こり、まさに泥沼状態です。私は、予算委員会でその実態を示して、「総理は、戦闘地域に送らないというけれど、イラク全土が戦場じゃないか。いったいどこにいくというのか」とたずねました。首相の答えは、「戦場でないところをみつけていく」(笑い)というものでしたが、そんな場所はどこにもない。なぜ、こんな泥沼状態になるのか。それはみなさん、あの戦争が間違った戦争だったからではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
米英軍の占領支配に道理がないからであります。その応援のために自衛隊を出せばその泥沼のなかに日本も沈むことになるではありませんか。(拍手)
いまからでも派兵は中止せよ。この声を突きつけようではありませんか。(大きな拍手)
第二は、世界の道理にたった自主外交への転換であります。
世界の道理といえば、その中心には国連憲章というルールがあります。いまそのルールを破ったとして世界から厳しい批判を浴びているのがアメリカであります。
九月二十三日の国連総会でアナン事務総長は、アメリカがとっている先制攻撃の戦略、国連を無視した単独攻撃の戦略にたいして、「国連憲章の原則への根本的な挑戦」と厳しく批判しました。私は先日の国会で、アナンさんのこの発言をひいて、小泉首相の考えをただしました。ところが、首相はアナン事務総長の発言がアメリカにたいする批判であるという事実すら認めませんでした。「アナンさんは一般論でいっている」とか、「他のこともいっている」とかいって、最後まで認めない。答弁につまって小泉さんがいったことは、「アナンさんに聞いてくれ」というものでした。それをいったらおしまいではありませんか。あまりにもなさけない態度といわなければなりません。(拍手)
国連憲章にもとづく平和の秩序を守り抜く。それに背くものがあれば誰であれ批判する。憲法九条を持つ国としてそういうことが堂々と主張できる自主外交に転換させようではありませんか。(拍手)
第三は、そういうアメリカいいなりの根源にある日米安保条約をなくすことであります。世界を見渡しますと、軍事同盟というのはもう古い。東アジアでは、北朝鮮との関係を抱えている韓国をのぞけば、軍事同盟を結んでいるのは日本だけです。東南アジアの諸国──ASEANを中心に、非核兵器、非軍事同盟の立場で、東アジアの共同体をつくろうという流れが強まっています。そのスローガンは「アジアのことはアジアで決めよう」というものです。「アメリカとは友好関係を結ぶが、いいなりにはならない」。これが当たり前の流れではありませんか。(拍手)
そのときにアメリカいいなりの根源にある日米安保条約を絶対不変のものとする勢力には、およそ日本の改革も、未来も語る資格もない。私はそのことをはっきりいいたいと思うのであります。(大きな拍手)
日本共産党とともに日米安保条約をなくして、二十一世紀には、独立・平和・非同盟、そして基地のない日本をごいっしょにつくろうではありませんか。(大きな拍手)
これが私たちの日本改革の方針のあらましです。大企業応援の政治から暮らし応援の政治への転換。アメリカいいなりの政治を断ち切り、独立・平和の日本を築く。自民党政治を大もとから変えるほんとうの改革を示している政党は、日本共産党だけであります。この党を伸ばしてこそ「政治を変えたい」という国民のみなさんの願いをかなえることができます。どうか絶大なご支持を日本共産党にお寄せいただきますことを最後に述べて、私の訴えとさせていただきます。(大きな拍手)