2003年10月11日(土)「しんぶん赤旗」
【ロンドン9日西尾正哉】国際的NGO(非政府組織)の国際アムネスティ、オックスファム、「小武器に関する国際行動ネットワーク」が九日、「テロに対する戦争」の名で米国などが他国への軍事援助を拡大しており、人権が抑圧されている国々への武器輸出が急増していると批判する報告書をロンドンで発表しました。これらの団体は、人権侵害につながる武器輸出の国際的規制を求めるキャンペーンを開始しました。
報告書は、「米国では人権抑圧をおこなう国の軍隊への軍事援助や訓練を禁じる国内法があったが、これらの原則はテロとのたたかいの名でないがしろにされている」と指摘。「米国から軍事援助を受ける国は二〇〇一年の同時テロ事件以降、急増しており、米国務省自身の人権記録で問題とされた国も含まれる」とし、コロンビア、アゼルバイジャン、パキスタン、インド、ウズベキスタンなどの国名を挙げました。
パキスタンへの軍事援助は三百五十万ドル(約三億八千万円)から十三億ドル(約千四百億円)に約三百七十倍にも増えたといいます。
英国も軍事援助を急増させており、二〇〇〇年の二百万ポンド(約三億八千万円)から〇二年の四千万ポンド(約七十四億円)へと二十倍も増えました。
報告書は、「テロとの戦争では、重大な人権侵害にまったく注意が向けられていない」と批判。アフガニスタンで北部同盟軍が捕虜にしたタリバン兵をコンテナに詰め込んで移送し、大量の死者が出た事件を挙げ、「戦争犯罪の疑いの強い事件であるのに調査せず、対テロ戦で人権は二の次だというメッセージを世界に送ってしまった」と指摘しました。
また「多くの政府はテロと大量破壊兵器を重大な脅威とみなしているが、国際法にもとづいて対処すべきだ。対テロ戦の名で平和と正義を犠牲にすべきではない」と強調しました。