2003年10月17日(金)「しんぶん赤旗」
公明党は、基礎年金への国庫負担を二分の一に引き上げるための財源として、所得税の定率減税を段階的に廃止する方針を打ち出しています。これについて、日本共産党の志位和夫委員長は九日の党首討論で、これが庶民増税になることを明らかにしつつ、「そういうことをしないとはっきりいえるのか」と、小泉純一郎首相の姿勢をただしました。首相は、それを明確に否定せず、十四日の記者会見では、「消費税以外にも財源がある。それを探すのが政治だ」と、定率減税廃止に含みを残しました。庶民大増税になる、その内容を見てみました。
所得税の定率減税とは、所得税率(累進税率)をかけて算出した税額から、その20%(上限二十五万円)を差し引くという減税措置です。
この所得税の定率減税を廃止すると、いったい、どれだけの増税になるでしょうか。
財務省がよく使う「サラリーマン世帯モデル(片働き夫婦、子ども二人=うち一人は十六歳以上二十三歳未満=の四人家族)」で、年収ごとに試算すると、表のようになります。
例えば、年収八百万円の世帯では、現在の税額の二十八万四千八百円より七万一千二百円増え(増税率25%)、三十五万六千円にもなります。
同様に、年収四百万円から年収一千万円の低中所得者では、増税率は一律25%にのぼります。
ところが、年収一千三百九万円以上になると、その増税率は急激に少なくなり、年収一億円では増税率は2・45%にまで縮小します。
この「定率減税の廃止」による増税は、サラリーマンだけでなく、個人事業者など所得税を負担するすべての国民に同様にふりかかるものです。高額所得世帯ほど増税率が小さい一方、中低所得世帯は25%増の大幅な増税になるわけで、庶民大増税そのものです。
この「定率減税の廃止」による増税の規模は、財務省によると年間約二兆五千億円。基礎年金への国庫負担を現在の三分の一から二分の一に引き上げるために必要な財源は、年間二兆七千億円。この点でも、小泉首相の狙う「消費税以外の年金財源」が、この庶民増税である疑いは濃厚です。
所得税の定率減税の廃止による増税額(試算) | |||
(単位:万円) | |||
給与収入 | 現在の納税額 | 増税額 | 増税率(単位%) |
300 | 0 | 0 | 0.00 |
400 | 3.92 | 0.98 | 25.00 |
500 | 9.52 | 2.38 | 25.00 |
600 | 15.12 | 3.78 | 25.00 |
700 | 21.04 | 5.26 | 25.00 |
800 | 28.48 | 7.12 | 25.00 |
900 | 41.28 | 10.32 | 25.00 |
1000 | 55.04 | 13.76 | 25.00 |
1100 | 69.6 | 17.4 | 25.00 |
1200 | 84.16 | 21.04 | 25.00 |
1300 | 98.72 | 24.68 | 25.00 |
1400 | 116.6 | 25 | 21.44 |
1500 | 141.2 | 25 | 17.71 |
2000 | 283.7 | 25 | 8.81 |
5000 | 689.23 | 25 | 3.63 |
10000 | 1021.73 | 25 | 2.45 |
(注)給与収入は、サラリーマン世帯(片働き夫婦、子ども2人=うち1人は16歳以上23歳未満=の4人家族というモデル世帯)の年収額 |