日本共産党

2003年10月17日(金)「しんぶん赤旗」

きょうブッシュ米大統領来日

米の顔色うかがう外交でいいのか

対イラク  米の一喝で派兵急ぎ


 ブッシュ米大統領が十七日に来日し、小泉純一郎首相と首脳会談をおこないます。焦点はイラクへの自衛隊派兵と巨額の資金拠出問題です。米国いいなりの外交でいいのか――。目前に迫った総選挙でも問われる、試金石の一つです。


「お茶会じゃない」

 「派遣が決定されたときに対処できるように、できる準備はやっていきたい」

 石破茂防衛庁長官は十五日、ベーカー駐日米大使にこう表明しました。ブッシュ大統領の来日を前に、イラクへの自衛隊派兵の準備表明を駆け込み的におこなったのです。

 イラクでは、米軍の不法な軍事占領に国民が怒りを強めています。軍事占領は、テロと暴力の土壌を拡大し、事態は泥沼化の一途をたどっています。

 国連のイラク現地事務所が発表している「治安情報」(最新版)でも、一日から四日までの四日間で、二十六件もの武力事件がイラク全土で起こっています。

 日本のNGO(非政府組織)の代表も「現在のイラクの治安状況では、(自衛隊の)派遣条件である『非戦闘地域』と確定できる場所は見当たらない。何より占領軍と連携する軍隊的な組織が出ていくことによって、さまざまな政治勢力との交戦を呼び込む危険性は非常に高い」(「朝日」十六日付)と懸念の声をあげています。

 小泉首相は当初、「状況をみて、(自衛隊を)派遣しない場合もあるし、する場合もある」(七月二十五日)と慎重な姿勢もみせていました。ところが、九月以降、イラクの治安状況が急激に悪化しているなかで、「派遣ははっきりしている」と断言し、早期派兵に急カーブを切りました。

 アーミテージ米国務副長官に八月下旬、日本政府の中東担当特使が、「逃げるな」「お茶会じゃない」と一喝されたからです。

 この一喝で、イラクの状況もおかまいなしに態度を急変する――。これには、日本政府の立場に近い安保専門家からも「自尊心が壊される思いがして当然だ」という声があがったほどです。


「数十億ドル出せ」

 英国の三倍にのぼる十五億ドル(千六百五十億円)もの資金拠出の決定も、首脳会談の前に、駆け込み的におこなわれました。総選挙を意識して、米国の圧力で決めたとみられないようにするための演出です。

 しかし、日本政府が決めた負担額は、イラクの占領当局(CPA)に必要な費用を「あわせて考え」(川口順子外相)たもの。欧州連合(EU)が「CPAから独立したチャンネル」で負担することを決めているのとは対照的です。

 ブッシュ大統領は九月上旬の演説で、日本を名指しして「財政的貢献」を要求。アーミテージ国務副長官は同月、駐米日本大使に、「billions(数十億ドル)」との要求を伝えたと報じられています。

 同副長官は、同月三十日の米下院公聴会で、「日本とは数字をあげるため集中的に協議をおこなった。彼らは気前のいい約束をすると思う」と、資金の拠出に応じる国として日本だけをあげて証言していました。


「国連中心へ」が世界の声

 国際社会では、イラクへの先制攻撃の戦争が「国連憲章への根本的な挑戦」(アナン国連事務総長)と指弾されています。多数の国々は、米軍の軍事占領から国連中心のイラク復興支援へと軌道を移しかえることを求めています。

 ところが、小泉首相は、米国はイラク戦争を「国連憲章にもとづき始めた」(十月一日)とあくまで擁護しつづけています。イラクの復興も「国連の関与を強める」というだけで、米軍の占領支配の継続を当然視しています。

 自衛隊派兵と巨額の資金拠出は、米軍の不法な占領を支え、固定化することにつながるものです。


名指し要求で巨額拠出

 自衛隊派兵資金拠出
日本共産党きっぱり中止占領行政を支援し、固定化する形での拠出に反対
自民、公明必ず派遣国力に応じた負担をおこなう
民主占領軍に加わる派遣には反対。新たな国連決議による多国籍軍への派遣は検討現在でも、おこなうべきだ

各党の態度

 イラクへの自衛隊派兵と資金拠出問題について、各党はどのような態度をとっているのでしょうか。

 【自民、公明】 “必ず自衛隊を派遣する”

 自民、公明などの与党は「必ず自衛隊を派遣する」(安倍晋三・自民党幹事長)とし、派兵を強行しようとしています。

 資金の拠出についても、「世界のGDP(国内総生産)からみれば米国についで二位だから、(日本が)どの程度負担すべきかはおのずとコンセンサスが出てくる」(冬柴鉄三・公明党幹事長)と巨額負担は当然という姿勢です。

 【民主】 多国籍軍への参加を検討

 民主党は「先制攻撃をした米英占領軍に加わる形で自衛隊を出すことは断固反対」(菅直人代表)としています。

 しかし、新たな国連安保理決議があがり、多国籍軍が編成される場合には、「中身によっては自衛隊を憲法の枠のなかで出すことはある」「いまのPKO(国連平和維持活動)法を飛び越えてもいい」(岡田克也幹事長)と言明。自衛隊を活用すること自体には反対していません。

 これには自民党の安倍幹事長も「まっとうな議論だ」とエールを送っています。

 資金の拠出については、「現在でも、人道的な問題についての復興支援は、経済的にはやるべきだ」(菅代表)としています。

日本共産党  国連中心、非軍事の人道支援を

 日本共産党は「アメリカの不法なイラク占領支配を支援するために自衛隊派兵を強行すれば、イラク復興支援に結びつくどころか、混乱をさらに長引かせ、日本はとりかえしのつかない道に足を踏み入れることになる」(総選挙政策)と強調。「イラクへの自衛隊派兵はきっぱり中止すべきだ」と主張しています。

 イラクの復興支援については、米軍の不法な占領支配を助け、固定化することになる形での資金拠出に反対。「国連中心の復興支援の枠組みづくりのために努力すべきであり、その枠組みのなかで非軍事の人道支援をおこなうべきである」(志位和夫委員長の談話)と訴えています。


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