日本共産党

2003年10月18日(土)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい 選挙特集

年金問題 消費税増税なしで不安のない年金制度にできます


 総選挙を前に、暮らしに直結する年金論議に、国民の関心が集まっています。この間の論戦で、二つの焦点が浮かび上がっています。第一は、公的年金の土台となる基礎年金の国庫負担の引き上げを、約束どおり直ちに実施するのか。第二は、国民が安心できる年金改革の将来像を示しているかどうかです。

待ったなし 国の負担2分の1に引き上げ

日本共産党 ただちに実行

自民、公明、民主 先送り


引き上げは国民への約束

 二〇〇四年「年金改革」をめぐり、基礎年金への国庫負担引き上げは、待ったなしです。

 基礎年金(国民年金)は、厚生年金をはじめすべての公的年金に共通する土台となります。現在、給付の三分の一は国庫負担を財源としています。これを二分の一に引き上げることは、年金財源確保のための中心問題です。しかも引き上げは過去二回、政府と国会が国民に約束したことです。

 一九九四年には、五年後の年金改定の際に「二分の一を目途に引き上げる」という付帯決議を、国会で自民党も賛成して全会一致で決定しました。二〇〇〇年の改定では法律の付則に「二〇〇四年までの間に、安定した財源を確保し……二分の一への引上げを図る」と盛り込まれました。

 日本共産党は、年金問題での三つの改革提案(別項)の第一に、約束どおり来年からただちに二分の一に引き上げることをあげています。

 ところが、小泉首相は「一年間で上げる必要もない。何年かけて引き上げるか、当然議論していい問題だ」(十四日)などとのべ、先送りする姿勢を明らかにしました。公明、民主も五年後に先送りする公約を掲げています。こうした姿勢こそが国民の年金不信を広げているのです。


日本共産党の「3つの改革」

 第1の改革……基礎年金への国庫負担を、現行の3分の1からただちに2分の1に引き上げる。その財源は、公共事業費の削減、道路特定財源などの一般財源化、軍事費の削減など歳出の見直しによってまかなう

 第2の改革……リストラの横暴をおさえ、雇用と所得をまもる政策への転換で、年金の安定した支え手を増やす

 第3の改革……175兆円にものぼる年金積立金を計画的に活用する


どうする─国庫負担2分の1


時期財源
共産ただちに公共事業費の削減、道路特定財源の一般財源化、軍事費の削減
自民「1年間で上げる必要ない」(首相)庶民増税を検討。参院自民党は消費税増税で結論
公明5年間で定率減税の廃止、年金課税の強化による庶民増税2.7兆円
民主5年間で予算のムダづかいにメスを入れる(マニフェスト)

ムダ削り、道路特定財源も活用 共産党

図

 国庫負担を二分の一に引き上げるために必要な財源は約二・七兆円です。これは、道路特定財源(ガソリン税など道路整備だけに使途を特定した税金)の一般財源化、ムダな公共事業費や軍事費の削減など歳出の見直しで、逆立ち財政をただすことでまかなうことができる──これが日本共産党の主張です。

 たとえば、ムダな道路建設の温床と批判されている道路特定財源は、今年度予算で五・七兆円もあります。地方をのぞく国費分だけで三・四兆円です。これを一般財源に変えると、年金など社会保障の財源に活用することができます。

 自民党、公明党は、逆立ち財政にメスを入れるつもりはなく、国庫負担引き上げを庶民増税でまかなおうとしています。とくに公明党は、所得税の定率減税の廃止や年金課税の強化を提起。小泉首相も「消費税以外にも財源はある。それを探すのが政治だ」とのべ、増税を否定していません。

 民主党は、二分の一への引き上げの財源を公共事業の見直しなどで生み出すとしていますが、道路特定財源を、年金ではなく高速道路無料化に毎年二兆円も充てようとしているため、引き上げそのものを先送りする計画です。


保険料増、給付カット計画 政府

 小泉内閣・自公両党は、国庫負担引き上げを先送りして、年内に「年金改革」の政府案をまとめようとしています。その中身は、負担増・給付減の大改悪です。

 ●保険料は…

 厚生年金の保険料は、いま年収の13・58%(これを労使折半)です。これを自民、公明の両党は一・五倍、年収の20%(同)まで上げようとしています。国民年金の保険料も、いまの月一万三千三百円を、月一万八千円台まで値上げします。

 “上限の20%まで引き上げたあとはそれで固定する”といいますが、20%になっても“保険料収入が不足する”という口実で給付を削減する計画です。

 ●給付は…

 現在、厚生年金の給付水準は、厚労省のモデル年金(四十年加入した平均収入のサラリーマンと専業主婦の夫婦二人分)の場合で、現役世代の手取り賃金の59%とされています。自公両党は、これを50%まで下げてもいいとしています。公明党は「おおむね50%から50%台半ば程度」と公約に盛り込みました。

 現在の厚生年金のモデル世帯の場合、年金額は夫婦で月二十三万六千円です。50%まで下がったらどうなるでしょうか。約二十万円に下がり、月約三万六千円、年間で約四十三万円に相当する大幅カットになります。

年金制度の仕組み

図

 公的年金は二階建てのしくみになっており、職業によって加入する制度が異なります。一階部分はすべての国民に共通する国民年金(基礎年金)。これに上積みされる二階部分は、会社員が厚生年金、公務員や私立学校の教職員が共済年金に加入します。

 老後に受け取る年金の財源は、国民や事業主が支払う保険料と積立金の運用収入、税金でまかなわれます。二十歳以上のすべての国民に加入が義務づけられている基礎年金(国民年金)については現在、給付に必要な費用の三分の一を税金(国庫)で負担しています。



どうする 将来像――必要な負担だれが

大企業や高額所得者に応分の負担を 日本共産党

消費税だのみの 自民、民主


社会保障を予算の主役に

 年金問題をめぐるもう一つの熱い焦点は、将来の改革方向です。必要となる新たな負担をだれがするのかという問題です。

 日本共産党は、年金問題では、「三つの改革」とともに、将来的に加入者全員に一定額の年金を保障する「最低保障年金制度」を、国費と事業主負担によって創設することを提案しています。そのさい、中小企業には現在の負担より重くならないようにします。

 財源も明確です。当面は、社会保障を予算の主役にする歳出改革で十兆円以上の財源を確保します。たとえば国と自治体に納めた税金のうち社会保障の公費負担として戻ってくる比率は日本が29%です。しかしアメリカ47%、ドイツ44%、イギリス43%などから見れば低い水準となっています。

 日本も同じような“見返り率”に引き上げるならば、新たに十兆円を超える財源を生み出すことができます。そのために、浪費的な公共事業、軍事費などの無駄を徹底して削ることです。

 将来の高齢化社会を支える財源はどうするのか。大企業や高額所得者に、応分の負担を求める税制と社会保障の抜本改革を行う──これが日本共産党の提案です。

 日本の企業が税・社会保険料を負担する割合は、ヨーロッパ諸国の五─八割にすぎません。これをヨーロッパ並みにすれば、高齢化社会を支える財源は生まれ、将来も消費税増税なしで安心できる年金制度は実現できるのです。

共産党が提案
「最低保障年金制度」を創設

 将来的には、基礎年金部分を発展させて「最低保障年金制度」を創設します。

 厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台(1階部分)として、加入者全員に一定額の年金が支給される「最低保障年金制度」を創設します。そのうえに、それぞれの掛け金に応じて年金が上積み給付されるようにします(2階部分)。

 財源は、国庫と事業主の負担でまかないます。中小企業の負担は、いまより重くならないようにします。

将来不安ひろげる各党案

 自民党は、二〇〇四年年金改革に続く社会保障の抜本改革について「若者と高齢者が支えあう、公平で持続可能な(年金)制度を構築する」というだけ。そのなかで方向がはっきりしたのは消費税増税です。

 将来の社会保障制度の財源として、「将来の消費税率引き上げについても国民的論議を行い、結論を得る」と明記しました。小泉純一郎首相は「いずれ上げざるをえない状況がくることは分かっている」(十日、TBS党首討論番組)とのべています。

 民主党は、「基礎年金の財源は消費税を充て、新しい年金制度を創設します」(政権公約)。菅直人代表は、基礎年金全額を消費税で確保するため6%が必要といい、十三日の会見では「10%程度になることもある」と二ケタ税率にまで踏みこんでいます。


庶民増税の公明党

図

 公明党は「公明党が勝てば年金は安心」「増税はしません」と主張していますが、まったくのごまかしです。

 公明党が提案する「年金100年安心プラン」は、給付水準を現役世代の所得の「50%から50%台半ば」(現在約60%)に引き下げる一方、保険料は年収の「20%」(労使折半、現在13・58%)まで引き上げます。

 そのうえ基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる財源(二・七兆円)は、所得税の定率減税廃止と年金課税強化の大増税で充てる計画です。

 定率減税廃止で、年収四百万円の標準四人世帯で約一万円増、六百万円世帯で約三万八千円増など大増税となります。

 消費税についても「将来的には、社会保障全体の在り方を考える中で消費税引き上げの検討は避けられない」(神崎武法代表、時事通信インタビュー、十六日配信)とのべています。「年金改革」の中身は負担増・給付減、そのうえ増税も認めながら、「年金は安心」「増税はしません」とはよくいえたものです。


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