2003年10月18日(土)「しんぶん赤旗」
十七日の日米首脳会談を前に、小泉・自公政権は、国民に隠れてイラクへの自衛隊派兵準備を始めました。総選挙を前に、イラク問題の争点化を避けつつ、来日したブッシュ米大統領には、米国の要求に応えていることをアピールするというもので、卑屈な対米追従姿勢の根深さを示しています。
「政府は派遣を決定していないので、(派遣の準備は)防衛庁のできる範囲内で行う」
守屋武昌・防衛庁事務次官は十六日、自衛隊のイラク派兵に向け準備を一部開始していることを明らかにしました。
守屋次官は、これまでにイラクの風土、民族構成、宗教、治安状況などの調査を行っていることを明らかにし、隊員の「安全確保」措置も「考えなくてはならない」とのべました。一部報道によると、準備には、一部装備品の購入に向けた手配や風土病対策、アラビア語の学習、小銃訓練強化などが含まれるとされています。
しかし、守屋次官は、具体的な内容について「公にすることは好ましくない」とし、いっさい明らかにしませんでした。
今回の派遣準備は、これまでの慣例を破って行われている点でも異例です。
自衛隊が国連平和維持活動(PKO)で派遣される場合、官房長官が準備に向けた指示を閣議で行い、それを受けて防衛庁長官が部隊に対し準備指示を行うのが「カンボジア派遣(一九九二年)以来の慣例」(内閣府国際平和協力本部事務局)です。
しかし、今回、福田康夫官房長官は「できることから早くやろう」と防衛庁に事実上指示しつつ、表向きは「(派遣準備の)指示はしません」とものべ、従来の手順を踏まない形になっています。
「イラク派遣の是非が総選挙の争点になることは避けたい」が、一方で「総選挙後に準備を着手したのでは米国に期待が強い『年内派遣』が困難になるとの事情がある」(「朝日」十六日付夕刊)というのが大方の見方です。
政府は首脳会談に先立って十五日、「イラク復興」を口実に、十五億ドル(千六百五十億円、二〇〇四年分)の資金拠出を決定しました。福田官房長官は、首脳会談直前になった理由について「偶然の一致」とはぐらかしました。しかし、これも、発表が首脳会談後になると「米国の『圧力』に屈した印象を与え、『対米追従』との批判に拍車がかかりかねないからだ」(「毎日」十六日付)と指摘されています。
米国はこれまで、自衛隊の早期派兵と資金協力を強く求めてきました。今回の派兵準備や資金拠出の決定も、米国の要求に応えたものであることは明らかです。(田中一郎記者)