日本共産党

2003年10月23日(木)「しんぶん赤旗」

“自民対民主”の「対決」選挙――

これは財界が書いたシナリオだった

岡山演説会 不破議長の訴えから


 不破哲三議長は、二十一日の岡山市での演説会で、政権党の自民党と野党第一党の民主党が、消費税増税や憲法改定を競い合う状況を指摘したあと、“この異常な状況の背景に、なにがあるのでしょうか”と問いかけ、次のように訴えました。

 私は、先ほど、“今の日本の政治状況が怖い”といいました。財界と自民党が旗を振って消費税大増税、国民を苦しめる仕事をやろうという、アメリカいいなりに憲法改悪をやろうという。そのときに野党第一党が「どちらも賛成だ」といって声を合わせる。私は、これはほんとに日本の政治にとって怖いことだと思います。

アメリカ式の政治が手本

二大政党のどちらも財界が後押しという体制へ

 なぜこんなことになったのか。実はこの政党の配置自体にも、財界の作戦があるのです。財界の、日本の政治をもういっぺん握りなおそうというとんでもない野望がある。

 だいたいいままでは、一方に、自民党・公明党の政権がある。これに対して、野党は、立場はいろいろ違っていても、野党共闘で対抗する。こういう政党の配置でした。

 これが財界には面白くないんですね。こんなことをやっていて、自民党がもし大失敗をやって支持を失ったらどうなるのか。そんなことになっても心配がないような政治に改造したい。どうしたらいいか。アメリカが手本だというのです。

 アメリカは民主党と共和党がある。民主党が失敗したら共和党が次にでる。共和党が失敗したら民主党が次にでる。どっちも財界が後押ししているのですから、どっちにかわっても政治の流れにたいした違いはない、財界にとって天下泰平だ。日本をこういう政治に変えたいというのです。

 思い出してください。一九六〇−七〇年代に、アメリカはベトナム戦争という大侵略戦争をやりました。あれを起こしたのは民主党の政権です。今度はイラク侵略という無法な戦争をやりました。始めたのは共和党の政権です。戦争と平和という大問題でも、民主党と共和党にあまりちがいがないのです。日本もこういう政治に切り替えたい。

「マニフェスト選挙」と比例代表制の廃止を

昨年10月・財界団体(経済同友会)が提唱

 それで、去年の十月に経済同友会という財界団体が、政界「改造」の大計画を発表したのです。私、いま改めて読んで驚きました。“日本は政党の数が多すぎる”、よけいな政党が多い。まあ私たちはよけいな方なのでしょう(笑い)。いまの選挙制度(小選挙区比例代表並立制)はそういうよけいな政党を排除するために作ったのだが、失敗した。まだ多すぎる。今度は、もう一歩すすめて、選挙も、政権党とそれにとってかわろうという野党第一党が対決しあう「マニフェスト」選挙にしようじゃないか。選挙制度も、小さな政党が出てこれないように小選挙区一本にして(単純小選挙区制)、比例代表制をなくそうじゃないか。この二つを柱にした「政治改革」をやろう、こう提案を発表したのです。

 それに飛びついたのが、民主党でした。だから、これまであまり聞いたことのない「マニフェスト選挙」というものが、今年になってからはやりだした。一番の出所は財界のこの提案です。

 それで、財界の思惑は自民党でなかったら民主党、民主党でなかったら自民党、どちらにも財界の後押しがある、そういう政界にしたいということだったのですが、民主党自体が、その思惑にそった政党に発展しようと考えたようなんですね。

財界のシナリオにそった民主党・自由党の合併劇

合併の当事者たちが真意を語る

 この間、民主党と自由党の合併があったでしょう。合併の話がまとまってから、当事者たちが、あちこちに本音を言い出しました。

 たとえば菅さんはある雑誌のインタビューで最近話しています。なんで自由党と合併したんですか? と聞かれて、“これまでの民主党では経済界(つまり財界です)からは信用がうすい。やはりここは自由党と組むことで、政権交代の可能性が増していく”−−つまり経済界の信用が得られる、ということです−−、これが合併を推進した考えだということです。

 小沢さんも別の雑誌でいっています。民主党は、図体はでかいが、政権を任せるのは不安だし、自由党は、その主張はいいが、政権には遠い−−これが財界の見方だという解説です。つまり、自由党の「主張」と民主党の議席がいっしょになれば、財界から信頼できる大きな力を持った政権交代の政党がうまれる、実は狙いがそこにあったんだということが、このごろになって、当事者が口ぐちに言い出したのです。

 ですから、今度の選挙の“政権公約”でも、自民党が「憲法改正に踏みだします」といえば、民主党も「創憲」、つまり憲法を新しいものに変えますという。消費税の問題で、民主党がまず「公約」に年金財源は消費税でと書けば、自民党も国民的論議をへて、税率引き上げの“結論”をだすと書く。政策の基本が変わらない二つの政党という体制が現れたのです。

財界提案を受け入れた「比例代表削減」の暴挙

“自分たち以外の野党は 国会から追い出す”

 そればかりか、比例代表制をなくそうという財界の提案にまで飛びついて、それを今度の「政権公約」にしたのが、民主党なんですね。

 民主党の重点政策のなかに「比例代表の議席を八十減らす」、いま百八十の議席を百に減らすという公約がうたわれました。政権をとったら、来年には法律を国会に出すと言っています。

 みなさん、比例代表の議席がいまなぜ百八十という半端な数なのか知っていますか。

 三年前に自民党・公明党・自由党の三党政権時代に、比例を二十削るという、選挙法改悪案を出してきたのです。そのときに共産党・民主党・社民党が野党共闘で一致して反対し、最後までがんばりました。これが最初の野党共闘でした。二十議席削ることに、われわれといっしょに反対した民主党が、どうしてさらに八十議席も削ることを自分から提案するのか、まったく筋の通らない話ではありませんか。(拍手)

 だいたい比例代表制というのは、細川内閣が選挙制度を小選挙区制に改悪したとき、それとだき合わせる形で入れたものです。細川首相だって国会で言いました。“比例代表制というところに、国民のいろんな意見を国会に反映させる保障がある”。「民意」、つまり国民の意見を反映させる鏡になるのが比例代表であって、それがあるから民主主義が成り立っていると、言わざるを得ませんでした。つまり民主主義の保障だということですよ。

 それを全部削ってしまう、その第一歩として半分にする。それを野党第一党の民主党が提案し、解散前の国会でも、小泉さんを問いつめて、「賛成だ」といわせました。

 三年前に削減反対の野党共闘に参加した立場と照らし合わせてみれば、これが野党の立場を投げ捨てて、「自分たち以外の野党は国会にはいらないよ」という、他の野党の国会追い出しの態度に転換したことは明確ではありませんか。

 いま日本共産党は衆議院で二十議席、全部比例代表です。社民党は十八議席、そのうち十五議席は比例代表です。比例代表をまず半分にし、やがてはゼロにするということは、こういう政党はいらないということです。日本共産党のような、財界主役の政治、アメリカいいなりの政治に正面からたち向かい、国民が主人公の政治をめざす政党からは議席をうばいとる。まさに民意と民主主義を切り捨てる暴挙ではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

財界いいなりの勢力に日本の政治をまかせるわけにはゆかない

 みなさん、今度の選挙で浮きぼりになったのは財界のこういうとんでもない野望です。自分たちの勝手になるように、日本の政界の「改造」をはかる。それを背景に、憲法改悪と消費税大増税をやってのける。そこまで財界が政治に介入しはじめた。

 ここに今度の選挙を無理やり「自民対民主の対決」だと描き出す、大騒ぎの、一番の狙いがあるのです。こんなことは絶対に国民の力で打ち破らなければなりません。(拍手)

 みなさん、二十一世紀、こんな財界が後押しする勢力に、日本の政治を任せるわけにはいきません。

 いまの自民党政治を打ち破って、本当に国民が主人公といえる日本、国民が誇りをもてる日本をつくる、それが多くのみなさんの願いではないでしょうか。(拍手)

 財界のひもがついた政党、つけてもらいたい政党にはこの仕事はできません。アメリカいいなりで結構だと割りきっている政党にもこの仕事はできません。私は、国民と腕を組んでその仕事ができるのは日本共産党だということを、みなさんに訴えたいのです。(大きな拍手)


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