2003年10月24日(金)「しんぶん赤旗」
「逃げるな、お茶会じゃない」「日本は気前のいい貢献をしてくれる」。米国に迫られ、小泉・自公政権はあわててイラク占領支援のための自衛隊派兵と、資金拠出に動き出しています。しかし、米英軍のイラク占領継続でなく、国連を中心にしたイラク復興と、一刻も早いイラク人の主権回復を求める声が世界の大勢です。
イラク駐留米兵のアンケート調査 | |
イラク戦争 「戦う価値はなかった」 | 31% |
「士気は低い」 | 34% |
(米軍準機関紙「星条旗」の2000人アンケートから) |
小泉・自公政権は、イラクへの自衛隊派兵について、総選挙での大きな争点になることを避けるため、選挙後に年内派兵を決定しようとしています。
その一方で、防衛庁は、官房長官の正式な指示もないのに、すでに派兵準備を開始。イラク派遣が取りざたされているC130輸送機は、ミサイル攻撃の回避訓練も行っています。PKO(国連平和維持活動)で自衛隊を派遣する場合に慣例になっている専門調査団の派遣も省略する方針です。
政府は「戦闘地域には行かない」と繰り返しています。しかし、イラクの現状はそんな生易しいものではありません。
主要な戦闘が終了した五月以降、米英軍への攻撃は拡大。国連イラク事務所の治安局が発行している「最新治安情報」(セキュリティー・アップデート)によると、五月十五日から十月四日までに約千百件の武力事件が発生しています(グラフ参照)。米軍の死者は二百二十二人に達し(二十一日現在)、英軍十九人、デンマーク軍一人の死者も出ています。
また、民間研究団体「イラク・ボディカウント」によると、千五百人以上のイラクの民間人が、占領軍による銃撃などで死亡しています。
国連憲章に違反した米英軍の無法な先制攻撃戦争の結果生じた軍事占領にたいして、イラク国民の怒り、憎しみが高まり、事態は泥沼化しています。戦争の「大義」とされた大量破壊兵器も発見されず、米兵にもその正当性を疑問視する声が増えています(別項)。
アナン国連事務総長も「占領がつづくかぎり、抵抗は広がる」と警告しています。それでも自衛隊をイラクに派兵すれば、取り返しのつかない事態になります。
小泉・自公政権の米国いいなりの根っこに「日米同盟」絶対の立場があります。
自民党は、「日米同盟関係を最も大事にし」、「その次に国際協調」(額賀福志郎政調会長)と、「日米同盟」をなによりも重視する立場です。日本外交の原則の一つだった「国連中心主義」も投げ捨てこれまで以上のアメリカべったりぶりです。
公明党も、「日米安保というものは、日本にとって基軸」(冬柴鉄三幹事長)と主張しています。
民主党も、「政権公約(マニフェスト)」で「日米関係を成熟した同盟に強化」すると強調。「日米同盟が、もっとも重要な二国関係」(枝野幸男政調会長)とし、日米同盟絶対視で自民党と同じです。
イラクの復興問題で、世界の多数の国々は、「米英軍主導の占領支配ではなく、国連中心の復興支援を」「占領行政の継続・固定化ではなく、イラク国民による国づくりへの早期の移行を」と、求めています。米英軍の占領支配を継続・固定化しようとしているのは、米国などごく一握りの国々にすぎません。
国連の安全保障理事会は十六日、イラクに関する新決議一五一一を全会一致で採択しました。同決議は、イラク国民への主権返還などで一定の前進がありました。
しかし、米英軍主導のいまの占領の枠組みを基本的に維持していることから、フランス、ドイツ、ロシアは決議には賛成しつつ、「国連の役割」「イラク国民への責任移譲」の点で問題があったとし、軍隊の派遣も資金の拠出もしないことを明らかにしました。中国も同じ態度です。
欧州連合(EU)は、イラク復興への資金拠出を決めていますが、米英の占領当局(CPA)から「独立したチャンネル(経路)」でおこなうことを確認。復興にとって「イラクの適切な治安環境」「国連の強力かつ中心的役割」「イラク国民に政治責任を移管する現実的日程表」「透明性をもった多国的な基金の設立」が必要であると強調しています。
一方、小泉・自公政権は十五日、ブッシュ米大統領の訪日にあわせ、来年分として十五億ドル(千六百五十億円)もの、世界でも突出した巨額の資金拠出をいち早く決定。十七日の日米首脳会談で小泉純一郎首相は「やるべきことはきちんとやる」と、自衛隊派兵と資金拠出を表明しました。
国際社会の圧倒的多数が国連中心の復興支援の枠組みづくりを真剣に求めているのに、そんなことはおかまいなしに、なんの原理・原則もなく、米国にいわれるままに金も軍隊も出す。これが小泉政権なのです。
イラクへの派兵は、地上の戦闘地域に戦後はじめて自衛隊を送りこむことを意味します。「戦闘地域には行かない」というイラク特措法の建前に照らしても、とうてい許されません。不法な米英軍の占領支配のもとで、自衛隊を派兵すれば、日本も、占領軍と同じように、イラク国民の憎悪と攻撃の対象になります。日本共産党は、憲法に真っ向から反するイラクへの派兵計画の中止を強く求めています。
また、用途の決定権を米英占領軍が握っているもとでの資金拠出は、占領行政を支援し、固定化するものです。今求められているのは、米英軍主導の軍事占領から、国連中心のイラク復興支援へ軌道を移しかえ、早期にイラク国民による国づくりへ移行することです。日本共産党は、国連中心の枠組みのなかで非軍事の人道支援をおこなうべきだと訴えています。
米国いいなりの自民・公明陣営や、条件次第では自衛隊の派遣もありうるという民主党との違いは鮮明です。(別表)
イラク派兵 | 資金拠出 | |
共産 | 違憲で世界の流れに逆行。 きっぱり反対 | 軍事占領を支援し、固定化する資金拠出に反対 |
自民・公明 | 「必ず派遣する」(安倍幹事長)と断言。 年内に先遣隊を派兵 | 当面、1650億円の拠出を決定。「大きな金額だが、わが国の国益にとっても大事」(北側公明党政調会長) |
民主 | 占領軍に加わる形では反対。国連決議にもとづく多国籍軍へは「出すことはある」(岡田幹事長)が、「もう少し全体の動きをみて判断」(菅代表) | 「政府の説明がない中で、妥当かどうか判断を若干しかねる。使い方が問題」(枝野政調会長) |