2003年10月25日(土)「しんぶん赤旗」
“具体的に、文化の現場がどんな状態で、どんなことが困っているかをつかみ、援助するのが政治の役割ではないか”──、日本共産党の林紀子参院議員が、民間劇場の閉鎖が相次いでいる問題をとりあげ、文化庁が「個人所有の劇場、ホールはやや減少傾向にある」と数字だけの答弁をしたため、同議員は、芸術・文化活動の担い手の実情をつかむ必要性をこのように指摘しました(二〇〇二年十二月)。
文化芸術振興基本法(二〇〇一年)が制定され、芸術・文化活動への公的支援の充実が切望されています。日本共産党国会議員団は、各分野で独自に調査・懇談をすすめながら、政府として責任ある調査を求めています。
たとえば、映画、演劇の現場では、「芸能にたずさわる人間に労災保険が適用されていない。現場から、労働災害が数多く起きていると訴えがきている」(文化団体との懇談での声)といわれる現実があります。
畑野君枝参院議員は、アニメ労働者のアンケート調査から、平均労働時間が十・八時間に及びながら、平均年収は二百四十七万円でしかないこと、雇用保険未加入者も55%に達していると指摘。映像、芸能の分野で、政府として現場の実情を「調査すべきではないか」と迫っています(二〇〇二年四月)。
こうした努力が実りつつあります。今年五月、畑野議員が日本映画再生にかかわって、再び現場の調査を求めたところ、政府から「実際に撮影所で働かれている方々から実態を伺う」という答弁を引き出し、調査を約束させました。
議員団は同時に、独自の調査・懇談で出された要望をもとに、一つ一つ改善・充実を求めています。差別的な税制の改善や著作隣接権を財産権まで拡充すること、映画、演劇などの人材養成機関を国の責任で充実させることや文化庁の助成の改善など、多様な問題をとりあげてきました。
所得税法には、芸能法人を他の社会的な法人から差別して、事前に税金を徴収するという差別的な制度がありました。昨年、畑野参院議員があらためてとりあげ、撤廃を求めました。運動が広がるなか、今年三月、この差別的な制度は撤廃されることになりました。
実演家の権利を保障する著作隣接権のうち、人格権は昨年六月にようやく認められましたが、財産権はまだ付与されていません。石井郁子衆院議員、畑野議員は、すみやかな実現を求め、文化庁に「権利を付与するということを前提」にすすめると答弁させました。
ところが、経済産業省がアニメ声優の権利をすべて製作会社に帰属させる「契約書」のひな型を作成したことが明らかになり、石井議員が実演家の権利を擁護するよう求めました。「特定の契約内容を文化庁が決めるというようなことは考えておりません」とひな型を事実上認めない答弁をさせています(二〇〇二年六月)。
日本映画については、議員団として日本映画振興チーム(会長・西山とき子参院議員)を昨年結成し、フィルムセンターや撮影所などの調査を続け、質問でも瀬古由起子衆院議員、西山、石井、畑野議員らが繰り返しとりあげました。
さらに、文化庁の映画振興に関する懇談会が今年四月に発表した提言をかけ声だけに終わらせないよう、「日本映画振興への実効ある施策と公的支援拡充について」政府に申し入れました。こうしたなか、来年度の文化庁予算概算要求では、フィルム保存のための事業に今年度の九倍以上計上させるなど、前進もかちとっています。
小泉内閣は、「構造改革」をすすめるとして、公的支援の充実に逆行する施策も行っています。
振興基本法の制定直後、小泉内閣は、日本芸術文化振興会も対象に「整理合理化計画」を発表(二〇〇一年十二月)。「一定期間経過後には助成措置を終了」と打ち出しました。
翌年十月には日本芸術文化振興会を独立行政法人にする法案を提出。独立行政法人は、「行政コスト」削減のため、文部科学省が「中期目標」を決め、事業を「効率的」にすすめたか政府が「評価」する組織です。効率優先で監督を強める、文化になじまない最悪の法案でした。
党議員団は、「計画」段階から反対。法案提出後、芸術・文化団体と懇談会を開き、石井議員が唯一反対の立場で質問しました(十一月)。自民、公明、民主各党は、「いっそうの合理化、効率化と経費の削減に努める」とした付帯決議まで共同提出し、賛成しました。
悪政と立ち向かいつつ、文化団体の要望に一つ一つこたえ、公的支援の充実をすすめる党国会議員団の役割が大事になっています。(辻 慎一・党学術文化委員会事務局)