2003年10月26日(日)「しんぶん赤旗」
二十四日、イラク復興支援国会議の閉幕後に行われた共同記者会見で、パウエル米国務長官は、「巨大な成功」を収めたとコメントしました。しかし、この会議をバラ色に描き、日本の支出もこれで歓迎されるとみるのは危険です。米英軍の侵略戦争によって生活基盤まで破壊されたことで求められる本来の復興支援と、米国による占領支配が続くもとでの米国主導の復興との矛盾が明らかになりました。
表明された拠出額は、世界銀行が算定した復興必要額の六割にとどまりました。総計三百三十億ドル(約三兆六千万円)といっても、米国と日本で二百五十三億ドル、独仏、ロシアなど主要国は最後までノーをいい続けました。土壇場になってサウジアラビアやクウェートなど湾岸諸国が約十八億ドルの拠出を表明したのは、米国の強い圧力のためでした。
七十七カ国も集まって、多くの国が拠出を表明しなかった理由は、各国・各機関の代表の発言のなかで、泥沼化の様相を見せる治安問題への不安や、イラクの主権回復の必要性、あるいは援助資金運用にあたっての透明性の必要が繰り返し強調されたことに見いだすことができます。
治安問題が解決されなければ「復興を始めることも人道援助を続けることも無理だ」(フィンランド)という指摘はまさに問題点をついています。治安悪化で撤退を余儀なくされた国連や援助機関がイラクに早期に復帰する見通しは現在のところ立っていません。米軍の占領支配のもとで本当に援助がイラク国民の生活向上に結びつくのかという疑問もあります。
とりわけ石油収入の使い方が不透明で、イラク国民から「石油強奪」という反発も出ています。設置されるイラク復興国際基金も、実際にどう運営されるか不明な部分があります。米国はこの基金への拠出は消極的といわれ、米国内からも「だれがどう使うか明確でない資金拠出は納税者の理解が得られぬ」(ロサンゼルス・タイムズ紙)との批判があります。
戦争に反対した独仏は、主権を一国も早くイラク人の手に戻し、復興の主体もイラク人自身でなければならないと主張。欧州連合(EU)が拠出する援助とすでに明らかにしている独自の人道援助などを別にして、それ以上の拠出を拒否しています。全拠出額が目標を下回ったことは、独仏などの主張に同調し、米国の政策を批判する国が少なくないことを示しています。
見落とせないのは会議で日本が、まさに米国の副官として突出した役割を果たしたことです。米代表団筋からは「日本が早くから五十億ドルを出す意向を表明したのはすばらしかった。先導役を果たした」と礼賛する声が上がっているといいます。不足分を埋めるため日本に追加拠出を求める声もすでに上がっています。“復興”の名のもとに結局、米軍占領体制の維持、継続に協力することになる資金供与の危険性を浮き彫りにしています。
(マドリードで浅田信幸)