2003年10月31日(金)「しんぶん赤旗」
バンコクからの報道によると、タイの上院外交委員会や最大野党・民主党などから、政府にたいしイラクに派遣した国軍部隊の即時撤兵要求が出ています。英字紙バンコク・ポスト二十九日付は一面トップでこれらの動きを報道、「治安への恐怖、撤兵要求を導く」と伝え、社説でも即時撤兵を求めました。
撤兵要求は、二十七日にイラクの首都バグダッドの赤十字国際委員会(ICRC)現地本部など連続爆弾テロで、三十五人が死亡したのをきっかけに広がっています。
タイ政府は米国の要請に応じ、九月から兵士や技術者、医療関係者など四百四十三人の部隊をバグダッド南方百キロのカルバラなどに派遣し、主として道路復旧や地元住民への医療援助活動にあたっています。
これにたいし上院のクライサク外交委員長は「(イラクでは)戦争がいまも続いている。最近の爆弾事件は米国がイラクでの状況を統制しておらず暴力がますますひどくなることを示している。政府は、イラクからできるだけ早く兵士を撤退させなければならない」と訴えました。
また、イムロン・マルリーム上院議員は、イラクでは反米グループがあらゆる犠牲を払ってでも米軍を撃破しようとしており、イラクは彼らにとって「墓場」になりつつあると指摘。米国と連合する国ぐにの兵士も、また、その存在の目的にかかわらず攻撃されやすいと語りました。
民主党のジュリン副代表も、「タクシン首相はイラク情勢を真剣に考えていない」と批判。
広範な団体で構成する「人民民主主義運動」のスリヤサイ・カタシラ書記長は、イラクへの派兵が、戦争の宣言やそれに伴う裁判権について規定した憲法の二二三条と二二四条に抵触していないかどうかを問う請願を憲法裁判所に提出するとのべています。
タイのタクシン首相はイラク戦争については公式には支持を表明しませんでしたが、戦争開始前のことし三月にはクライサク氏ら上院議員全体の六割にあたる百二十人が米国政府にたいするイラク攻撃反対の書簡に署名しています。
ブッシュ政権は、タイ政府にたいし米タイ相互防衛条約を盾に、イラクへの派兵を執拗(しつよう)に迫ってきました。現在、タイ国軍部隊が駐留するカルバラはイラク中南部に位置し、日本政府が自衛隊の派遣先として検討中とされるサマーワはカルバラの東南約百九十キロの地点にあります。