2003年11月1日(土)「しんぶん赤旗」
【ワシントン30日浜谷浩司】バグダッド駐在の国連職員の撤退は、米軍によるイラクの治安回復失敗を国際的に印象づけ、ブッシュ米政権への打撃となりました。
パウエル米国務長官は、国連事務総長との事前の会談で、今回の撤退に反対を表明していました。ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も三十日、国連の役割を重要だとし、安保理が十月に採択した決議一五一一は「国際社会が後ろだてになっていることをイラク国民に示した」と強調しています。
国連や赤十字国際委員会の撤退によって、人道援助に携わるNGO(非政府組織)にも、同様の動きが広がるとみられます。
国連は、米国の無法な単独行動主義に対立する、国際協調のシンボルでした。このため米政権が各国に要求している部隊と資金両面での支援は、さらに困難となります。
しかし、この事態は米政権が招いたものです。米政権がいう国連の「重要な役割」は、人道支援や選挙実施などでの技術的支援を念頭においたものにすぎません。米国提案による安保理決議一五一一でも、米国はあくまで占領継続に固執、国連の政治的役割を否定しました。
このためアナン事務総長は「占領が続く限り、レジスタンス(抵抗)は拡大する」と発言していました。米軍占領のもとで、国連や赤十字が、占領の協力機関として標的にされています。
国連は撤退を一時的だとしていますが、復帰のめどはたっていません。米政府は、圧倒的な物量を持つ米軍で治安を回復するとしていますが、長い時間がかかることを自身で認めています。
国連や赤十字の撤退で、もっとも困難に置かれるのはイラク国民です。米国が十分な治安を確保できない以上、米国が占領を直ちに終結し、政治権限を国連とイラク国民に移譲させることこそが解決の前提です。