2003年11月4日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントン2日浜谷浩司】イラクでヘリが撃墜され十六人の米兵が死亡した事件についてラムズフェルド米国防長官は二日、記者団に対し、「こうした事件を越えて進むことが必要だ」「最後には勝利する」と強気の姿勢を示し、イラク人による治安確保を重視すると強調しました。
事件に関し長官は、米国にとり「悲劇的な忌まわしい日だ」と、衝撃を隠しませんでした。撃墜に使われたとみられる地対空ミサイルについて、「大量にある。数百どころではない」(ABCテレビ)と述べ、今後も同様の事件が起きる可能性を示唆しました。
さらに、治安対策の前面にイラク人をたてる考えを強調し、軍、警察、国境警備、ガードマンなど約十万人いるイラク人要員を、来年までに二十万人に倍増させると述べました。
旧イラク軍を部隊ごと復活させる案が取りざたされている件についても、「それは常に検討している」「旧軍は自分で解散した。それをいろいろな手で組み直している」と述べ、これを認めました。
二日のイラク・バグダッド近郊での米軍輸送ヘリ撃墜事件は、軍事的、政治的に米国に大きな衝撃を与えています。
ヘリ撃墜に使用された兵器については、小型の携帯用地対空ミサイルである可能性が指摘されています。旧フセイン政権は肩に担いで発射するソ連製のミサイルを少なくとも五千発保有していたとされ、その三分の二が行方不明になっているといわれます。
同ミサイルとみられる攻撃がこれまでも米軍輸送機にたいしておこなわれ、米軍側は捕獲に全力を挙げ、最大限の警戒をしいていました。それが阻止できなかったことで軍への衝撃は大きく、「米軍の制空権に赤信号」とか「米軍の士気に影響」(ワシントン・ポスト紙)といった指摘がでています。
イラク占領にはヘリや輸送機による物資・兵員の輸送が不可欠。世界最強の米軍ヘリなどが今回のように撃ち落とされることは、占領作戦継続に大きな障害をもたらします。
今回の事件はまた、ブッシュ政権のイラク政策への米国民の不支持が初めて過半数を超えた時に起こりました。イラクでの米兵死傷者の拡大に対する政府の無策ぶりが改めて浮き彫りにされた形となりました。
野党・民主党の大統領選候補からは、「ますます暴力的になるイラク情勢に対し政府は無回答だ」(クラーク氏)、「米国は、出口戦略をもった新決議を携え緊急に国連に行くべきだ」(クシニチ氏)などの批判が出ています。