2003年11月9日(日)「しんぶん赤旗」
アンカラからの報道によるとトルコ政府は七日、イラクへのトルコ軍派遣を中止したことを明らかにしました。米国はイスラム圏の有力国トルコの軍派遣がイスラム諸国の派兵の呼び水になるとして、同国からの派兵を重視していました。トルコ政府の決定は米国のイラク占領政策への新たな打撃であり、そのいっそうの行き詰まりを示すものです。
米紙ニューヨーク・タイムズ八日付は、インド、パキスタンの派兵拒否に加え、韓国も派兵を懸念し、日本もまだ派兵していないことを挙げ、「ブッシュ政権の努力は完全な失敗に近づいているようだ」と指摘しました。
トルコ外務省の声明によると同国のギュル外相は六日夜、パウエル米国務長官と電話会談し、イラク情勢を協議、派兵の「再検討」を申し出ました。
米国務省のバウチャー報道官も七日、トルコの派兵中止を確認。「もちろんわれわれは誰もが満足いくようにトルコ軍の派遣が首尾よく行われることを好んでいた」と遺憾を表明しました。
ロイター通信によると、トルコ政府の決定について専門家らは、トルコに派兵させる政治的負担の方がイラク駐留米軍の負担軽減という軍事的利益よりも高くついたとの見方を示しています。
国際戦略研究所のテーラー大佐は「トルコの決定はイラクで行われていることへの信頼の欠如の表現でもある」と指摘。トルコの政治コラムニスト、サミ・コーエン氏は「多くの人を驚嘆させたのは米国がこれほどの誤算をしたということだ」と述べました。
トルコ国会は十月七日、イスラム国としては初めてイラク派兵を決定、規模は一万人程度とされてきました。しかし国内世論の反発が激しく、米英占領軍が主導するイラク統治評議会の内部からも反対が相次いだため、エルドアン首相は十月下旬、「無理に派兵しない」と発言していました。