2003年11月13日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 巨額の損失を出している年金積立金の株式投入が、今後まだ増えるって本当ですか。(東京・一読者)
〈答え〉 現在、百七十五兆円にのぼる日本の公的年金の積立金のうち、株式や国債など、各種の金融市場に投入される「自主運用」分は約五十兆円です。しかし二〇〇八年までに残りの年金積立金も全額が「自主運用」となります。
公的年金の積立金を元本の保証もない株式市場に投入することで、これまでに数兆円規模の累積損失も出ています。しかし厚生労働省の社会保障審議会年金資金運用部会は今年三月、株式運用を「今後とも維持することが適当」とする意見書をまとめ、厚労省は今後も株式での運用を続けます。
年金積立金の株式などでの運用は、一九八〇年代から政府の「金融自由化」政策の中で始まりましたが、これまでは運用の中心ではありませんでした。年金積立金は郵便貯金などとともに、大蔵省(いまの財務省)資金運用部に預けられ、財政投融資の原資として安全・確実に運用されるのが基本でした。
このしくみは二〇〇〇年に自民・公明などが賛成した資金運用部資金法などの改悪で、根本的に変わりました。積立金などを資金運用部に預ける制度は廃止され、財政投融資も、政府の「財投債」発行などで資金を調達することになりました。年金積立金や郵貯も七年間は「財投債」の一部を引き受けられますが、これが終わる二〇〇八年に全額が自主運用となるのです。
財政投融資の全体を金融市場に委ねる改悪は、大銀行などの利益に奉仕するものです。財政投融資にも、無駄な公共事業の資金ともなるなど問題がありましたが、市場任せは解決になっていません。逆に、公共住宅や教育など国民生活関連の財投機関が資金面でも圧迫され、国会の議決範囲も縮小されて監視が及ばなくなり、国民の年金積立金などは危険な金融市場に投げ込まれるなど、ゆがみをいっそう大きくしています。
(清)
〔2003・11・13(木)〕