2003年11月15日(土)「しんぶん赤旗」
政府は十四日の閣議で、来年の公的年金改定における厚生労働省の年金試算に関する日本共産党の井上美代参院議員の質問主意書への答弁を決定しました。そのなかで、女性の労働力率見通しを引き上げたケースについての年金試算も「今後の課題として検討する」ことを明らかにしました。
日本の女性の労働力率は、出産・育児で離職する三十歳代が、二十代、四十代と比べ、10%程度低い「M字型」になっているのが特徴です。厚労省が九月に出した年金試算では、この「M字型」は二〇二五年になってもなくならないとしています。
井上氏は「欧米ではすでに克服されている問題が、今後二十年たっても改善されない」とするのは、「働く意欲を持つ者が働くことができる社会」をめざす政府の方針にも反していると指摘し、(1)「M字型」が克服された場合、厚労省の年金試算より保険料増や給付減といった国民負担増が軽減されるのではないか(2)将来的に「M字型」が克服されるケースについても選択肢を示すべきではないか−と質問していました。
政府答弁では、(1)女性の労働力率が高まれば負担能力は改善されるが、給付も増大する可能性があり、年金財政への影響は一概に言えない(2)「M字型」が解消したケースの年金財政見通しの作成を今後検討する−などとしています。
|
井上美代参院議員の話 先日のOECDの報告書でも、出産・育児による女性のキャリアの中断は大きな損失であり、働く女性への支援を拡充すれば日本の将来の労働力不足は避けられるといわれています。今回の政府答弁では、なぜ「M字型」を解消することができないのか理解できません。また、少子化がすすみ、「労働力不足で年金給付の削減は当然だ」としながら、女性労働力率の見通しに関しては「一概に答えられない」というのも筋が通りません。
年金改正については、かたよった厚労省の試算の枠にとらわれず、広い視野で検証する必要があると思います。