2003年11月16日(日)「しんぶん赤旗」
|
教育と文化を世界に開く会は十五日、東京・早稲田大学で「教育基本法『改正』がもたらす危機」と題し、姜尚中氏と佐藤学氏(いずれも東大教授)の講演会を開催しました。
会場いっぱいの二百人が、「改憲と教基法改正を許さない大多数を掘り起こすことができる」(佐藤氏)という話に熱心に耳を傾けました。
姜氏は、世界政治の画期を一九七九年ととらえて、イギリスや大平内閣が目指した新自由主義政策が、いま日本で本格化したと指摘しました。
「この弱肉強食の枠組みに対し、われわれのよりどころは憲法と教基法だが、『反対』だけではたたかえない。二つの法律の来歴を再検討し、ここにいるわれわれが、戦後民主主義を担ってきた大多数の人々と一皮むけば一続きなんだということをどう語るかだ」
佐藤氏は、新自由主義の一番の標的が教育だとのべ、いま教基法改正が改憲と一体ですすめられていると訴えました。「教基法は、実は国体護持の文脈で出てきた」と分析した佐藤氏は、「教基法は、当初守るべきものではなかったが、戦後の民主主義のたたかいが教基法を意味あるものにしてきた」とのべました。
早稲田大学教育学部の学生(23)は、「教基法を改正しても、日本の抱える問題が解決するわけではない」とのべました。
教育基本法「改正」問題で、教育学関連十五学会は十五日、共同公開研究会を東京都内で開きました。
公開研究会は二回目。報告した高知大学人文学部の青木宏冶教授(日本教育法学会)は、「法は権力であり、法定化は抑制的でなければならない」とのべ、「心の教育」を教育の目的に盛りこもうとする教育基本法「改正」のねらいは、個人より国家を、権利・自由より義務を優先させることにあり、「人権としての教育が抑圧されることになり、大きな問題を含んでいる」と指摘しました。
また、山梨学院大学法学部の荒牧重人教授は、国際教育法の発展の経過を報告。中教審の答申などで「新しい時代にふさわしい教育基本法」が強調されるものの、国連・子どもの権利条約などについては何もふれておらず、時代や社会の変化に対応していないことを批判しました。