2003年11月17日(月)「しんぶん赤旗」
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米軍と自衛隊は、十月から十一月にかけ、列島各地で、大規模な軍事演習を繰り広げています。その内容をみると、米国が起こす戦争に日本を動員するガイドライン(日米軍事協力の指針)・有事法制の具体化が着々と進められていることがうかがえます。
陸上自衛隊の第三六普通科連隊の約八百人と、沖縄駐留の米海兵隊、第三海兵師団第四海兵連隊(キャンプ・シュワブ)の約八百五十人は、十月二十七日から十一月九日まで饗庭野演習場(滋賀県)で実動演習をおこないました。
同演習に参加した米海兵隊部隊は、その直後の十二日、三重県の民間港・四日市港を使って、韓国・釜山へ向かいました。四日市港を米軍が使ったのは「初めて」(四日市港管理組合)です。
同港からは、海兵隊員のほか、高機動車約四十両、コンテナ五十一個が、米軍が借り上げている大型高速輸送船ウエストパック・エクスプレスで輸送されました。
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同輸送船は「(沖縄の)海兵隊がどんな緊急事態にも即応し、迅速展開する能力を向上」(在沖縄海兵隊のホームページ)させるために導入。ウルフォウィッツ米国防副長官は、六月の米下院軍事委員会で、沖縄から朝鮮半島への海上輸送がこれまでの約十日間から二日間に大幅に短縮できたと絶賛しています。
在沖縄海兵隊司令部によると、四日市港を出港した大型高速輸送船と海兵隊部隊は、韓国で別の人員を乗せ、沖縄へ戻りました。
饗庭野演習場での日米共同演習に沖縄の海兵隊が参加する際、兵員輸送には、これまでは主に小松空港(石川県)が使われていたといいます。
米軍は今回、四日市港を使った理由について、日本海が荒れる可能性があるうえに、「四日市港には名古屋港より広い駐車スペースがある」と説明(「朝日」十三日付)。地元では、戦時における同港の軍事利用に向けた地ならしとの批判が上がりました。
政府・与党、民主党が六月に成立を強行した有事法制(武力攻撃事態法)は、日本が武力攻撃を受けていない「予測事態」でも、自治体が米軍に対し物品、施設、役務を提供することを義務づけています。政府は、さらに同法を具体化するため、米軍支援法制の準備作業を進めています。
米国の戦争に、自治体が管理する民間港も動員する体制づくりが着々と進められていることが、浮かび上がっています。
海上自衛隊は七日から十六日まで、海自人員の半数以上にあたる約二万五千人、艦艇約八十隻、航空機約百七十機を動員した大規模な実動演習を実施。その一環として、同期間に米海軍と共同演習をおこなっています。
米側の参加艦船は、イラク戦争に参加した空母キティホーク、ミサイル巡洋艦カウペンス、ミサイル・フリゲイト艦ヴァンデグリフトをはじめ、ミサイル駆逐艦カーチス・ウィルバー、駆逐艦オブライエン、同クッシング(いずれも神奈川県・横須賀基地が母港)など十隻です。
海自は、米軍との共同演習とは別に、海自の大村基地(長崎県)を外国にみたてた在外邦人の輸送訓練も実施しています(八日)。大村基地に着陸したヘリコプターが模擬邦人を乗せ、空母型の全通甲板を備えた輸送艦「くにさき」(八、九〇〇トン)へ運びました。
昨年十一月にも、統合幕僚会議が中心となって在外邦人の輸送訓練をおこなっており、自衛隊を海外派兵する訓練が常態化していることを示しています。
このほか海自は、ゲリラ・特殊部隊対処や離島対処を専門とする陸自の西部方面普通科連隊の約百四十人を、佐世保基地(長崎県)で「くにさき」に乗せ、輸送する訓練も実施しています。
航空自衛隊は、六日から十七日まで、アジア地域での紛争など「周辺事態」を想定した総合演習を実施。また、二日から二十六日まで、グアムにあるアンダーセン空軍基地に戦闘機部隊などを派遣し、日米共同訓練をおこなっています。