日本共産党

2003年11月19日(水)「しんぶん赤旗」

暫定政権の樹立過程

米占領当局が監督


 イラクの米暫定行政当局(CPA)と同当局が任命したイラク統治評議会は十五日、来年六月までにイラク人による暫定政権を樹立することなどで合意しました。米国側は、暫定政権が「完全な主権を行使する」としていますが、暫定政権樹立過程をCPAが「監督」すると定めるなど、その保証はありません。また、主権移譲に不可欠な米軍撤退は行われず、統治評議会と協定を結びながら、駐留継続を狙うなど、形を変えた占領の継続ともいえます。

 CPAと統治評議会の合意は、来年二月末までに、暫定憲法にあたる基本法を制定すると規定。それに基づき、同年五月末までに暫定議会を選出し、六月末までは暫定政権を樹立します。その後、CPAは解散するとしています。

 暫定議会を選出するのは、政党や宗教、部族の代表から選ばれる「選出会議」です。同会議のメンバーは、イラクの十八州の代表で選ばれる組織委員会によって選ばれます。州の組織委員会のメンバーは十五人からなるといいます。

 合意は、CPAが、この組織委員会の結成を「監督する」としており、暫定政権結成過程でも米国が影響力を行使するしくみをつくりあげています。

 また合意は、CPAと統治評議会は、米軍とその同盟軍の地位を定めた協定を締結する形で、米軍駐留の長期化を狙っています。すでに、統治評議会のパチャチ委員は、米軍駐留の受け入れを表明するなど、駐留継続に向けた動きが進んでいます。合意には、米軍主導の「連合軍」に「幅広い自由裁量権」を与えるとの規定もあります。

 基本法は、このほかに、人権、宗教選択の自由、三権分立、集権主義の否定、軍と治安組織の文民統制、信教の自由などを保障するものになるといいます。

 一方、暫定政権後の真に民主的政権樹立のために必要な憲法の制定について、合意は、イラク国民が、直接選挙で選出する制憲会議によって起草するとしてます。制憲会議選挙は二〇〇五年三月十五日までに実施。同憲法に基づき、同年十二月末までに総選挙が実施され、その結果に基づき、民主的な本格政権が樹立されるとしています。

 イラク国内では、民主的な選挙の早期実施を求める声が相次いでおり、合意は、これを先送りしたものともいえます。また、現在も進行中の憲法制定作業は、制定委員の選考時点で暗礁に乗り上げています。

 合意内容は、CPAのブレマー文民行政官がワシントンでブッシュ大統領と協議し作成したものを、タラバニ議長ら統治評議会幹部に提示したもので、イラク人の民意を反映したものではありません。(岡崎衆史記者)


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