2003年11月21日(金)「しんぶん赤旗」
「安全な地域などないのが軍事常識」「隊員を犬死にさせるのか」――。イラクに派遣される自衛隊の主力は北海道の部隊。その北海道の陸上自衛隊第五師団(司令部・帯広)に所属していた元自衛隊員が本紙に隊員の不安を語り、「大義のない戦争への派遣はやめるべきだ」と訴えました。
自衛隊で訓練していた私の経験からもいえるが、恐ろしいのは自爆テロだ。イラク国民は米英軍に反感を持っているから、テロリストは住民の中に紛れ込み、守られているだろう。一般市民なのか、テロリストなのか容易に判別できない。普通の人間がテロリストに一変し、爆弾のスイッチを押して自爆する。防弾チョッキや防弾マスクでは防げない。これは最大の恐怖だ。
しかも彼らは日本を標的にすると公言している。政府のいう安全な地域、地帯などはない。
自衛隊の装備は、重機関銃や無反動砲などといわれている。派遣される砂漠地帯には磁気嵐もある。小銃をはじめ、武器が砂の影響で動作不良を起こさないか、高性能の無線通信機や精密機械などの装備が正常に機能するのかという不安も大きい。
日本の自衛隊は実戦の経験がない。訓練で撃つのは標的だ。しかも、武器使用については、警告、威嚇、警告射撃、正当防衛のための射撃と段階を定めている。自爆テロはこうした時間的猶予を許さない。
最大の問題は派遣の大義だ。イラク戦争のきっかけとされた大量破壊兵器は今も見つかっていない。戦争そのものの大義が揺らいでいる。しかも米軍内部からも撤退要求が広がってきている。自衛隊全体の士気にもかかわってくる問題だ。
安全な地域はないことが軍事常識であるにもかかわらず、安全であると偽って派遣を強行し、自爆テロにさらされた隊員はまさに犬死にになる。
日本の国や国民を守るためならまだしも、アメリカいいなりの大義のない戦争に加担することに私は反対だし、国民も納得しない。