日本共産党

2003年11月26日(水)「しんぶん赤旗」

急増 商品先物取引被害

老後の蓄え根こそぎ

「イラク戦争の影響で ガソリンもうかる」


グラフ

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 「老後の蓄え二千五百万円。わずか四十日間で根こそぎ失った」。商品先物取引被害に遭った横浜市の六十代主婦は「年金生活者をもだます悪徳商法。同様の被害を出してほしくない」と痛切に訴えています。国民生活センターへの昨年度の相談件数は八千三百二件。年末を前に強引な勧誘に注意が必要です。(遠藤寿人記者)

年金生活者を強引に勧誘

一本の電話から

 すべては、「夫の高校野球部の後輩」と名乗る男の一本の電話から始まりました。

 翌日、「後輩の名刺」を持ったK社(東証一部上場)の別の男が家にあらわれました。

 「イラク戦争の影響でガソリンでもうかる」「契約すればベンツも買えるし取引はいつでもやめれる」と、夫を言葉巧みに誘い込みました。

 男は次の日も「K社には優先的に情報が入る。いま金を出せば九割はもうかる」といい、二日間で「委託証拠金」千五十万円を出させました。

 四日目、「OPEC(石油輸出国機構)の減産が見送られ値が暴落した。いま、追加しないと元金がゼロになる。午後一時半までに用意してほしい」と新たに千五十万円を要求。現金を家にとりにきました。

 男は「こんなこと三年に一度しかない。信頼してください。一軒家でも買ってください」と夫妻に両手で握手しました。

 その後の取引は混乱を極めます。取引商品は「ゴム」や「生糸」にかわり、数百万円の追証を要求され続けました。

 不安になった夫婦は途中で「利益が出たところでいったん清算してほしい。信用できない」と必死で頼み込みました。しかし、男は「もうすぐ絶対二千五百万円になる。大丈夫だから」と取り合いませんでした。

裁判してもいい

 取引開始から四十日。「もう現金はない」と取引停止を通告。和解書の作成にきた顧客サービスの男は「納得しないなら裁判してもいい。費用は百三十五万円。法律的にはこちらが勝つに決まってる」とすごみました。

 戻ってきたお金は元金の三割、わずか七百五十万円でした。千八百万円近くがK社の手数料に消えました。

 和解後男は、帰り際に「担当だった課長は、支店長になりましたよ」とつぶやきました。後日、調べたら「夫の高校野球部の後輩」と名乗る男は存在しないことが判明しました。

女性、高齢者も

 国民生活センターに寄せられた被害相談は二〇〇〇年度四千四百件、二〇〇一年度六千百件、二〇〇三年度八千三百二件とうなぎ上りに増えています。

 被害者の救済を続ける名古屋先物・証券問題研究会代表の大田清則弁護士によると、もともと先物取引は、相場自体にリスクを伴うものの、業者によって損をさせられるケースが大部分です。その背景に一九九八年の商品取引所法の大改正があり、新規委託者の保護を目的とした三カ月間の取引量規制も改正後はなくなりました。その結果、初めての人でも最初から大きな取引に巻き込まれるようになり、女性や高齢者の被害が増えているのが特徴だといいます。

 大田氏は「業者の強引な勧誘や『客殺し』と呼ばれる意図的に損をさせるやり方に十分注意する必要がある。規制を強化する抜本的な法改正が必要になっている」と話します。


 商品先物取引 石油や農作物、貴金属などの商品を、将来の一定期日に売り、または買うことを約束してその価格を現時点で決める取引。農林水産省と経済産業省が所管する計七カ所の商品取引所があります。一般投資家は、取引所の「商品取引員」(仲介業者)に取引を委託。「委託証拠金」と「委託手数料」が必要です。委託手数料は各商品ごとに金額が決まっていますが、来年度末に完全自由化されます。


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