2003年11月27日(木)「しんぶん赤旗」
二十六日の参院予算委員会で日本共産党の小池晃議員が政府の年金改革案(厚労省案)をとりあげ、国民の安心を踏みにじる問題点、制度立て直しの方向を示して政府を追及。小泉純一郎首相、坂口力厚労相と白熱の論戦となりました。
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小池「(給付が)現役時代の所得の五割保障というのは、ごく一部の家庭。共働きや単身者はどうなのか」
坂口「共働きで43%、男性単身で39・3%」
厚労省案は年金保険料を来年から毎年値上げし二〇二二年には一・五倍(厚生年金)にもする負担増を求めつつ、給付水準もどんどん下げていきます。「公的年金にふさわしい水準の確保」といって、下げても現役の所得の50%(下限)を保障するとしています。しかし、この試算があてはまるのは、四十年加入し、妻が主婦のモデル世帯(現在月二十三万六千円給付)だけです。
小池議員は、このモデル世帯は厚生年金受給者全体の23・5%しかいないと指摘。共働きや単身者の場合は改悪後の給付水準が所得の50%を切ることを示し、改革のごまかしを追及しました。
女性の単身者の場合、四十年間フルタイムで働いて受け取る年金額(厚生年金)は現在で月額約十三万円。これは所得の53・3%を保障したものですが、厚労省案はこれを49・1%に、平均寿命がのびて経済が悪化した場合は45・6%まで下げようとしています。
国民年金の受給額はもっと低く、自営業者の平均受給額は月額約四万五千円。「こうした低額の年金の給付も下げていく提案ですね」。こう迫る小池議員に坂口厚労相は反論できませんでした。
さらに小池議員は「月三万、四万という年金の人はいっぱいいる。これが一割、二割削減されたら生きていけないという切実な声にどうこたえるのか」と首相答弁を要求。
小泉首相は「たしかに給付は維持したい、保険料を軽くしたいという意見は多い」とのべざるをえませんでした。
小池「国民の大切な財産の年金積立金を、いつまでも株式運用のリスクにさらしておいていいのか」
小泉「どの程度株式運用にあてたほうがいいのか、程度の問題だ」
二〇〇八年までに保険料からでている年金積立金の全額(約百五十兆円)の市場運用が予定されています。この間、積立金の一部、三十兆円の運用で六兆円の損失をだしながら、厚労省案は株式によるリスク運用の拡大をやめません。
小池議員は、運用機関の中枢そのものも金融機関と官僚で占められていることを明らかにしました。運用の実施者である年金資金運用基金(特殊法人)の近藤純五郎理事長は元厚労事務次官、二人の理事は旧厚生省(現厚労省)出身の元官僚と元みずほフィナンシャルグループ理事。運用方針を研究している年金総合研究センターの坂本龍彦理事長も元厚生次官で、専務理事も厚労省の元官僚です。
パネルを示して、役職を紹介すると委員会室に「オーッ」「オーッ」と驚きの声があがります。
小池議員は、厚労省の天下り先を保証し、そこに金融機関の社員を集めて積立金の運用方針を決め、金融機関が多額の手数料収入を得ている利権構造を示し、運用のあり方を抜本的に見直すよう提起。危険な株式に運用をまかせることを改めるよう求めました。
小泉首相が「専門家でも株で損したり得したりする問題だ」とのべると、委員会室は騒然とした空気に。株式運用の全面見直しには応じませんでしたが、「今後もよく検討しなければならない問題だ」とのべました。
小池「これから約五十年間は積立金を増やしていく計画だ。活用とはいえない」
厚労省案は財源対策として積立金の取り崩しを打ち出しましたが、厚労省案で実際に減り始めるのは二〇五〇年度を過ぎてから。小池議員は株式運用に回して損失をだすことはやめて、積立金の計画的活用をただちにはじめ、給付にあてるべきだと提案しました。
坂口厚労相は「共産党さんから(積立金の)引き下げるという話はぜんぜん聞いていない」と答弁。小池議員は、日本共産党が積立金の計画的取り崩し・活用を一九八〇年代から主張し、国会でも何度も質問していることを指摘し、それを知らないのは厚労相として「不見識だ」と批判。坂口厚労相は、当面は積立金の取り崩しを行わないことを認めました。