2003年11月28日(金)「しんぶん赤旗」
【エルサレム26日小泉大介】イラクのイスラム教シーア派有力組織、イスラム革命最高評議会(SCIRI)の議長でイラク統治評議会メンバーでもあるアブドル・アジズ・ハキム師は二十六日、シーア派の聖地ナジャフで記者会見し、米主導で決定されたイラク暫定政府樹立構想を批判しました。
また、同国のシーア派最高指導者と目されるアヤトラ・アリ・シスターニ師も同構想に懸念を示していることを明らかにしました。
イスラム教シーア派は人口の六割以上を占めるだけに、今後の米占領行政の行方に影響を与える動きです。
現地からの報道によると、ハキム師は会見で「(暫定政府構想では)国連の役割が減じられている。私は、それがイラク国民にさらなる困難をもたらす結果になることを恐れている」とのべ、占領当局からイラクへの主権移譲の過程に国連関与がないことを批判しました。さらに、「わたしは、統治評議会メンバーのなかに、暫定政府合意が理想的だと考えている人間がいるかどうか知らない」とのべ、統治評議会メンバーの多くが異議を唱えていることを示唆しました。
ハキム師は、会見に先立って会ったシスターニ師が、「(暫定政権構想にある)深刻な溝は克服されなければならず、そうでなければ構想はイラク国民の期待に応える能力を欠くことになる。構想はイラクへの主権移譲過程におけるイラク国民の役割を減じている」と語ったとのべました。
米主導の暫定政府構想は、来年五月までに国民議会を選出し、同六月には暫定政権を発足させて主権を占領軍からイラクに移譲、二〇〇五年末までに総選挙を実施しイラクの正式政権を発足させるとしています。しかし、暫定政府発足過程を米占領当局が「監督」するほか、主権移譲後も米占領軍がイラク駐留を続ける方針を明確にしています。