2003年11月29日(土)「しんぶん赤旗」
「安っぽい政治演技だ。大統領の外国訪問にどれだけの時間と人、カネがいることか。ブッシュは『任務完了』の横断幕を持っていったか。恥ずかしい」
「ブッシュ大統領は、この訪問に命をかけた。すごい大統領だ」
「支持拡大だけが狙いだ。ヒラリー(クリントン上院議員)がアフガニスタンとイラクに行くのを知って、出し抜こうという魂胆だ」
「狙いが何であれ、彼はいまなお国民にウソをついている」
ブッシュ米大統領がバグダッドを訪問したニュースが流れた二十七日午後(米東部時間)。パソコン通信「アメリカ・オンライン」の掲示板には、賛否双方の意見が次々に書き込まれました。
ブッシュ大統領の訪問は、イラク戦争開始時の「驚異」作戦にもたとえられる「電撃」的なものでした。しかし計画が持ち上がったのは十月だったとの情報もあり、周到な作戦が練られたことを示唆しています。
作戦はトップ・シークレット。例年のようにテキサス州の牧場で、感謝祭の連休を家族と過ごしていた大統領。ホワイトハウスは、大統領一家のディナーのメニューまで発表していました。
米軍基地となっているバグダッド空港で、民間貨物機が地対空ミサイルによる攻撃を受けてから、わずか五日後。大統領専用機の着陸には大きなリスクがありました。
しかしブッシュ大統領は、「米国は君たちを支持している」と米兵に直接語りかけることに、リスクを上回るメリットを見いだしたのです。
世論がブッシュ大統領にますます厳しくなっているからです。
『タイム』誌十二月一日号の世論調査によれば、大統領選挙でブッシュに投票するかとの問いに、「する」が47%、「しない」は48%。敗北を喫しかねない事態です。
毎日のように米兵の犠牲が伝えられることへの懸念と、なぜこんな戦争をしているのか、なぜこんなにカネを使うのか、といういらだち。世論調査には、えん戦気分が反映しています。
ロサンゼルス・タイムズ紙二十一日付は、イラクの泥沼化を懸念しているとの回答が86%に達したと伝えました。
普通の生活を送っていた人々を、予備役として戦場に送り込んでいるブッシュ政権。多くの家庭で、七面鳥を食べる感謝祭の食卓に、夫や父がいません。
「予備役の夫が招集されイラクにたつとき、私はなんと言えばいいか分からなかった。私は侵略には反対だった。でも、夫の強い義務感には誇りを覚えた。ブッシュ大統領は、よくてうそつき、悪くいえばバカだと思う。でも、いま私は、他の兵士の妻たちと同じように、テレビのニュースにかじりつき、祈り、夫の危険は見ないふりをしている。真昼でもときどき涙が出る」
シアトル・ポスト紙二十三日付に載った女性コラムニストの一文が、オンラインを通じて広く回し読みされています。(ワシントンで浜谷浩司)