2003年12月1日(月)「しんぶん赤旗」
イラク駐在の日本人外交官二人が殺害された事件は、米英軍による不法な占領の続く同国がまさに“全土戦争状態”であることを改めて示しました。
米国防総省や米中央軍司令部などの発表にもとづく統計でも、米英をはじめとするイラク駐留外国軍の犠牲者は、九月に三十三人だったのが、十月は四十五人、十一月は百七人に跳ね上がっています。
このうち十一月の米兵の犠牲者は、イラク戦争開始後、月別では最も多い七十九人になりました(二十九日現在)。まさに戦争状態への逆戻りです。
しかも、十一月に入って米英以外の国の犠牲者も急増しています。不法な占領の当事者である米英軍だけでなく、それに協力する国も標的にされています。
十二日にはイタリア軍警察の施設が攻撃され、関係者二十七人が死亡しました。今回の事件が起きた二十九日にもスペイン軍の情報機関員が襲撃を受け、七人が殺害されています。
日本に対しても、テロ組織アルカイダを名乗る人物がテロ攻撃を予告し、米国務省もその可能性を認めていました。今回の事件は、「日本が攻撃対象になることは論理的に免れない」(五日、岡本行夫首相補佐官)という政府自身の認識を現実で裏付けたものです。
今回の事件が起きた北部ティクリットはイラクでも「最も危険な地域」(防衛庁筋)で、自衛隊の派兵を検討している南部サマワは安全などとは決していえません。
ところが、小泉純一郎首相は事件を受けて、「日本はイラク人道復興支援に責任を有する国だから、どのようなテロにも屈しないという従来の方針は変えない。不変である」とのべ、自衛隊派兵の方針に変わりないことを強調しました。「非戦闘地域」などないということが、今回の痛ましい犠牲でだれの目にも明らかになっているのに、あくまで派兵に固執するというのです。
小泉首相は「テロには屈しない」と繰り返すことで、派兵を正当化しようとしています。
いかなる状況、理由であっても、テロは許されるものではありません。しかし、いまイラク国内で起きているテロや武力事件の背景には、米英軍による無法な戦争とそれに続く不法な占領の継続がイラク国民の怒りや憎悪を呼び起こしていることがあります。このことは、国連のアナン事務総長も「占領が続く限り、レジスタンス(抵抗)は続く」と認めています。
イラクの事態を解決するには、まず米英軍による不法な占領を終わらせ、国連中心の復興支援に切り替え、速やかにイラク国民に主権を返還すること以外に道はありません。国際的にもこの方向こそが道理あるものとして支持されています。
逆に、「テロに屈しない」などといって自衛隊派兵をおし進め、テロを呼び起こしている米英軍の占領支配を支援することは、テロの温床を広げるだけです。これほど矛盾した話はありません。
自衛隊派兵の道理のなさはもはや明白です。派兵計画は中止するほかありません。(山崎伸治記者)