2003年12月3日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 中国やインドも加盟した東南アジア友好協力条約には、どんなことが書かれているのですか。 (東京・一読者)
〈答え〉 東南アジア友好協力条約(TAC)とは、ベトナム戦争終結の翌年にあたる一九七六年に、東南アジア諸国連合(ASEAN)の当初の加盟五カ国が調印した条約です。条約前文で▽国連憲章▽一九五五年のアジア・アフリカ会議で採択され、非同盟諸国運動にひきつがれているバンドン十原則−などの精神と原則に従うと述べているように、締約国(条約加盟国)どうしが主権尊重・内政不干渉・紛争の平和的解決などを約束しあうものです。条約は今日のASEAN外交の基軸となっています。
条約第二条は、加盟国が従う基本原則として▽すべての国家の独立、主権、平等、領土保全、国家的同一性の相互尊重▽すべての国家が外部から干渉、転覆または強制されずに存在する権利▽相互内政不干渉▽平和的手段による不和や紛争の解決▽力による威圧や力の使用の放棄▽加盟国間の効果的協力−を列挙しています。
紛争が発生した場合、加盟国は武力による威嚇や武力行使を「差し控え」、「友好的交渉」で紛争を解決する(一三条)よう求められます。紛争当事国の直接交渉で解決困難な場合は、加盟国の閣僚級代表からなる理事会の仲介(一五条)や各国の援助(一六条)など、協力して平和的解決に手をつくします。
友好協力条約は、八七年の議定書改定で、ASEAN以外の国も加盟できるようになりました。いまASEANは周辺国にも加盟を呼びかけており、今年十月のASEAN首脳会議では中国とインドも条約に署名しました。日本も呼びかけられていましたが、同首脳会議に出席した小泉首相らは、日米安保条約への懸念などから否定的態度を示しました。このときの諸国の失望は大きく、日本政府は十一月に検討して友好協力条約への加盟方針をようやく決めたと報じられています。
(水)
〔2003・12・3(水)〕